こんにちは!
フラメンコギター池川です。
今回から新しいシリーズを始めます。
ぼくの著書「フラバン!〜ゼロからはじめるフラメンコ伴奏ガイドブック」に収録されている全10曲を、1曲ずつじっくり紹介していく企画です。
記念すべき第1回は、本の1曲目。
……ソレア? ブレリア?
いいえ、「コーヒー・ルンバ」です。
「え、フラメンコの本なのに歌謡曲!?」と思った方。その「なぜ」にこそ、この本の設計思想が詰まっているんです。
なぜ1曲目が「コーヒー・ルンバ」なのか
フラバンの第1章は「有名曲からはじめるフラメンコ伴奏」。コーヒー・ルンバとボラーレという、誰もが知っている2曲から始まります。
理由はシンプルで、知ってる曲なら、弾く方も聴く方も楽しいから。
フラメンコを始めたばかりの頃って、コンパス(フラメンコ特有のリズム・パターン)の理屈を覚える前に、まず「歌に合わせて弾けた!」という体験がほしいんですよね。
コーヒー・ルンバの原題は「Moliendo Café」(コーヒー豆を挽きながら)。日本では西田佐知子さんや井上陽水さんのカバーでおなじみの、あの曲です。
実はこの曲、メロディもリズムもフラメンコとの相性が抜群。本ではエスコビージャやジャマーダといったフラメンコ特有の構成も交えてアレンジしました。
つまり、知ってる曲を入口にして、気がついたらフラメンコの構成の中で弾いていた——という仕掛けになっています。
譜面が読めなくても大丈夫——「進行表」で弾く
フラバンは、五線譜もTAB譜も使いません。オリジナルの「かんたんフラメンコ伴奏進行表」という形で書かれています。
コーヒー・ルンバで出てくるコードは、E7・Am・F・Dm・G7・C・B7の7つだけ。フォークソングを弾いたことがある方なら「あ、知ってるやつだ」となるラインナップです。
曲の構成はこんな流れです。
ジャマーダ → Aメロ×2 → Bメロ → Aメロ → エスコビージャ → ジャマーダ → Bメロ → Aメロ → エンディング
カタカナの専門語が並ぶと難しそうに見えますが、ジャマーダは「踊り手が歌を呼ぶための合図」、エスコビージャは「踊り手が足技を見せるパート」のこと。役割がわかると、急に景色が見えてきます。
しかもコーヒー・ルンバは、コンパスの弾き方が1曲通してほぼ同じ。最初の1曲にこれ以上ない条件がそろっています。
つまずきポイントと練習のコツ
ルンバのコンパスは8拍。本では「かんたん」バージョンと「カッコいい」バージョンの2段階で紹介しています。
かんたんバージョンは、ダウン・ストロークとアップ・ストロークに、ボディの表面を叩く「ゴルペ」を混ぜたもの。まずはこれで1曲通せます。
慣れてきたら、親指のダウンと同時に薬指でゴルペを入れる「カッコいい」バージョンへ。同じ曲が、一気にフラメンコの音になります。
よくあるつまずきは2つです。
ひとつは、右手のリズムが単調になること。アクセントとゴルペの位置を意識するだけで、のっぺりした伴奏が締まります。
もうひとつは、歌を聴かずに自分の手元だけで弾いてしまうこと。伴奏の主役はあくまで歌。フラバンには模範演奏の動画と、ギターの音を抜いた「歌だけ音源」の両方を用意しているので、歌に合わせる練習がそのままできます。
模範演奏と解説はこちらの動画でどうぞ。
実はプロの現場でも大活躍の曲
「入門用の曲でしょ?」と思うかもしれませんが、コーヒー・ルンバはぼくの現場でもよく弾く曲です。
老人ホームでの演奏会や地域のイベントでは、フラメンコの本格的な曲種よりも、この曲のほうが圧倒的に喜ばれることが多い。みんなが知っているメロディが、フラメンコのリズムで鳴る。その瞬間、会場の空気がふわっと明るくなるんです。
仙台の生徒さんで、老人ホームの演奏プログラムにコーヒー・ルンバを入れている方もいます。習い始めた曲がそのまま「人前で弾ける持ち曲」になる——これが最初の1曲に有名曲を選ぶ、もうひとつの理由です。
千里の道も1コンパスから。
次回は第1章のもう1曲、「ボラーレ」を紹介します。お楽しみに!
※記事内の紙面画像は「フラバン!〜ゼロからはじめるフラメンコ伴奏ガイドブック」(池川寿一 著)より。
📖 フラバン収録曲 全曲解説シリーズ
- ① コーヒー・ルンバ(この記事)
- ② ボラーレ
- ③ セビジャーナス
- ④ ファンダンゴス・デ・ウェルバ
- ⑤ タンゴス
- ⑥ タンゴ・デ・マラガ
- ⑦ ガロティン
- ⑧ ブレリアス
- ⑨ グアヒーラ
- ⑩ ソレア
あなたに合った入口はこちら
※シリーズは順次公開中です。リンク先が開かない記事は公開までもう少しお待ちください。
この記事のテキスト『フラバン!』
「フラバン!〜ゼロからはじめるフラメンコ伴奏ガイドブック」(池川寿一 著)。譜面が読めなくても弾けるオリジナルの「かんたん伴奏進行表」で全10曲を収録。全曲に模範演奏&解説動画とギター音無し音源つきなので、買ったその日から踊り手・歌い手と合わせる練習ができます。
生の踊り手・歌い手と、合わせてみませんか?
フラバンの巻末にも書いたのですが、伴奏が本当に身につくのは「実際に踊り手や歌い手と合わせたとき」。教習所の路上教習と同じです。VIVAフラでは、スーパー練習会・おさらい会・発表会など、ギター・バイレ・カンテが一緒に合わせられるイベントを全国で開いています。教室の生徒さんは、フラバンで覚えた曲をそのままイベントで現場デビューできます。
ギター経験者の方は、無料の「90日 伴奏デビュー設計図」も参考にどうぞ。
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