生伴奏で踊りたい方へ|「フラバン構成」で準備する方法

こんにちは!

フラメンコギター池川です。

生のギターで踊ってみたい。でも、近くに伴奏してくれる人がいない。音源で振りを覚えても、誰かと合わせるところで止まってしまう。

そんなバイレ愛好家の方へ、ぼくから一つ提案があります。伴奏者と共有できる構成を、一曲用意してみませんか。

その土台として使えるのが、ぼくの著書『フラバン!〜ゼロからはじめるフラメンコ伴奏ガイドブック』です。ギター向けの本ですが、踊り手にとっても、曲の流れを共有するための材料になります。

本の構成を使えば、打ち合わせやリハーサルが不要になるわけではありません。初対面でも「どの曲の、どんな流れで合わせるか」を話し始めやすくする。そのための使い方を紹介します。

フラメンコは、同じ曲種でも構成が違う

フラバン8ページ。曲種の特徴と、二つのガロティン構成を比較した図(SAMPLE)
『フラバン!』8ページより(SAMPLE)

「ガロティンを踊ります」と伝えても、それだけで曲の最初から最後までが決まるわけではありません。歌振りが何回あるか、足のパートをどこに入れるか、ギターのファルセータをどこに置くか。同じ曲種でも、踊りによって流れが変わります。

上の紙面には、二つのガロティンの構成例があります。歌振りが一つの例と二つの例、足のパートを入れる場所などが異なっています。曲種名が同じでも、この地図が違うと、伴奏者が待っている次の場面と、踊り手が進みたい場面がずれることがあります。

構成を自由に組み立てられるのはフラメンコの面白さです。その自由を楽しむためにも、最初に一緒に見る地図があると便利です。

「フラバン構成」は、相談を始めるための土台

フラバンには、コーヒー・ルンバ、ボラーレ、セビジャーナス、ファンダンゴス・デ・ウェルバ、タンゴス、タンゴ・デ・マラガ、ガロティン、ブレリアス、グアヒーラ、ソレアの全10曲を収録しています。

各曲の進行表や模範演奏を、踊り手とギタリストが同じように確認できれば、ゼロから全体を説明する手間を減らせます。「ガロティンをお願いします」から、「本のガロティンの、この流れでお願いします」へ。相談が具体的になります。

ただし、相手が本を持っているか、その曲を練習したことがあるかは、先に確かめてください。「フラバン構成で」の一言だけで、どのギタリストにも伝わるとは限りません。

また、すでに先生から習った振りがある場合は、本に合わせて勝手に変える前に、先生へ相談しましょう。今の振りと本の構成を比べ、どこが同じでどこが違うのかを見るだけでも、伴奏者へ伝える内容が整理できます。

踊り手は、まず「次に何が来るか」を追ってみる

ギターの押さえ方を全部覚える必要はありません。最初は模範演奏を聴きながら、進行表のどの場所を演奏しているか指で追ってみてください。

歌が始まったところ、足のパートへ移ったところ、ギターの旋律を聴かせるところ。場面が変わる場所に印を付けると、「曲は知っているけれど説明できない」が少し減ります。

振りの細部を覚える時間とは分けて、音だけ聴く回を作るのもおすすめです。足を動かさなくても、合わせる準備は進められます。

生伴奏で合わせる前に、三つのことを共有する

フラバン9ページ。パートごとにコンパスの弾き方や速度が変わることを示した図(SAMPLE)
『フラバン!』9ページより(SAMPLE)

構成の順番が同じでも、速さや切り替わる合図まで自動的に同じになるわけではありません。上の紙面では、パートごとにコンパスの弾き方や速度が変わる例を示しています。

音源なら毎回同じ場所で変化しますが、生演奏では相手の音や動きを受け取ります。準備のときは、次の三つを共有しておきましょう。

1.曲と構成、変更したところ

本の曲名と使う構成を伝え、歌振りを増やす、足のパートを短くするなどの変更があれば明記します。変更がなければ「本の流れどおり」と伝えるだけでも、確認しやすくなります。

音源に合わせて練習した振りがあるなら、短い練習動画を撮って、相手に確認してもらえると具体的です。顔を撮ることより、足音と全体の流れが分かることを優先しましょう。

2.無理なく踊れる速さ

模範演奏と同じ速さを目標にしていても、当日その速さで踊り切れるとは限りません。今合わせたい速さを、実際の音や手拍子で示してみてください。

途中で速くする部分があるなら、その開始位置も相談します。「最後は速く」だけより、「この足のパートから」と場所を指せるほうが伝わります。

3.始まり、切り替え、終わりの合図

誰が始めるか、歌や足のパートへどう移るか、最後をどう締めるか。通し練習の前に、この三か所を取り出して合わせると、途中で迷いにくくなります。

合図の出し方が分からない場合は、振りの先生や伴奏者に見てもらいましょう。大きく動けば伝わる、目を合わせれば全部分かる、と決めつけず、実際に音が切り替わるかを確認します。

たとえば連絡するときは、「フラバンのセビジャーナスで合わせたいです。本の構成を使い、まず一番の始まりと終わりから練習したいです。音源と同じ速さはまだ難しいので、ゆっくり試せますか」と伝えられます。これは依頼文の例です。ご自身が踊る曲と状況に合わせて変えてください。

近くに伴奏者がいない場合は、VIVAフラのイベント案内から、ギター・バイレ・カンテが集まる回を探す方法もあります。参加できる曲、対象、持ち時間、事前打ち合わせの方法は開催回ごとに違うので、申込み前に案内を確認しましょう。

いきなり一曲を完璧に踊る約束にしなくて大丈夫。まずは構成を共有し、始まりと終わりを合わせる。生の音へ踏み出す準備は、そこから始められます。

記事内の紙面は池川寿一著『フラバン!』より。模範演奏・解説動画やギター音を抜いた練習音源は用途が異なります。踊りの練習には、まず伴奏の入った模範演奏を使って流れを確かめてください。

打ち合わせ用の一枚メモを作ってみよう

相手へ渡すメモは、専門用語をぎっしり並べなくても大丈夫です。「曲名」「本のどの構成を使うか」「本から変えた場所」「合わせたい速さ」「最初に練習したい部分」を、一項目ずつ短く書きます。言葉で説明しにくいところは、練習動画の時刻を添えると同じ場面を見られます。

たとえば「動画の1分20秒から足に入ります」と書いておけば、その前後を一緒に確認できます。ただし、動画の秒数は場所を探す目印です。生演奏を毎回まったく同じ秒数で進める約束ではありません。

歌い手も参加する場合は、どの歌を使うか、歌が終わったあとにどこへ進むかも一緒に確認してください。踊り手とギタリストだけで決めたことが、歌い手に伝わっていないまま始めないようにしましょう。

一度合わせたあとは、うまくいった場所も一つ残します。ずれた場所だけ書くと、次の練習が反省会になってしまいます。「始まりはこの合図で伝わった」と分かれば、そこを土台にして次の切り替えを練習できます。

構成を共通にする目的は、全員の演奏を同じに固定することではありません。迷いやすい場所を先に共有し、合わせる時間に相手の音を聴く余裕を作ることです。一枚のメモも、実際に合わせて分かったことを足しながら育てていきましょう。

▼ セビジャーナスの曲の構成を、動画でも確認する

ぼくの入門講座です。本の進行表を見る前に、曲がどう進むかを知る入口にどうぞ。

この記事のテキスト『フラバン!』

「フラバン!〜ゼロからはじめるフラメンコ伴奏ガイドブック」(池川寿一 著)。譜面が読めなくても弾けるオリジナルの「かんたん伴奏進行表」で全10曲を収録。全曲に模範演奏&解説動画とギター音無し音源つきなので、模範演奏で構成を確認し、用途に合う音源で練習できます。

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