定年後の趣味にフラメンコギターを選んだ人たちのその後——60代から始めてわかった3つの変化

こんにちは!

フラメンコギター池川です。

「退職したら、何か楽器を始めようと思ってたんですよ。で、フラメンコギターを選びました。」

体験レッスンで、こう話してくれた60代の男性がいました。

穏やかな口調でしたが、目はものすごく真剣でした。

「若いころからギターに憧れていたけど、仕事が忙しくて後回しにしてきた。もう後回しにする時間はない。」

その言葉が今でも頭に残っています。

VIVAフラには、定年後に初めてギターを手にした方がたくさん通っています。今日は、そういった方たちが1年後・2年後にどんな変化を経験しているかをお伝えしたいと思います。

①「定年後のひまつぶし」のつもりが、気づけば本気になっていた

朝のリビングでフラメンコギターを楽しそうに弾く60代の男性

最初から「本気でやろう」と思っている方は、実はあまりいません。多くの方が「少しやってみようかな」という軽い気持ちで始めます。

ところが、これが不思議なもので。

最初の1〜2カ月は「まあ趣味だから」と気楽に構えている方が、3カ月目あたりから変わり始めます。

60代前半のSさんは、最初の体験レッスンで「週1回でのんびりやりたい」とおっしゃっていました。半年後に話を聞いたら、「気づいたら毎朝30分弾いています。やめられなくなって(笑)」と言っていました。

このパターン、本当によく起きます。ぼくはこれを「フラメンコ沼現象」と呼んでいます(笑)。

なぜ本気になるのか、考えてみると理由はシンプルです。フラメンコは「進む感覚」がわかりやすいんです。リズムに乗れた瞬間、音が繋がった瞬間——そのときの快感が、次の練習へ引っ張っていく。

仕事を離れた後の毎日は、「達成感」を得にくい生活になりがちです。そこへ「上手くなった!」という体感が加わると、脳が喜ぶんだと思います。

②「体が元気になった」という声が多い

椅子に座り左手の指をていねいに押さえる70代のギター初心者

ギターを始めた方から、よく聞く話があります。

「指が動くようになった」「姿勢がよくなった気がする」「なぜか睡眠が深くなった」。

最初は冗談かと思っていたのですが、複数の方から同じような話を聞くうちに、これは本当のことだと思うようになりました。

70代のTさんは、ギターを始める前は「手がこわばって細かい動きが難しい」と心配していました。3カ月後には「手の動きが滑らかになってきた」と報告してくれました。毎日指を動かすことが、リハビリ的な効果になっているのかもしれません。

また、ギターを弾くには「今この瞬間」に集中することが必要です。次の音、リズム、左手の指の形——全部に意識を向けなければならない。その集中する時間が、日々の不安や雑念を切り離してくれる効果もあるようです。

「練習中は、嫌なことを忘れられるんです」という言葉を、何人もの方から聞いています。

③ 思わぬ「仲間」ができた

教室でギターを抱えて笑顔で談笑する60代70代の生徒たち

定年後の大きな課題のひとつが、人とのつながりです。

仕事を通じてできていた人間関係は、退職とともに一気に薄れます。特に男性は「友達をつくるのが苦手」という方が多く、孤独感を感じやすいと言われています。

ギターを始めると、これが変わります。

発表会や練習会に参加すると、同じ目標を持つ仲間ができます。「今日うまく弾けた?」「あの曲どうやって覚えた?」という会話から、自然に関係が広がっていく。

60代後半のKさんは、「最近、これほど新しい友達ができたことはなかった」と言っていました。練習会で知り合った方とギターの話だけでなく、旅行やご飯に行くようにもなったそうです。

フラメンコという文化は、本質的に「人と一緒に楽しむもの」です。踊り手と演奏者が合わせる、歌に伴奏する。そういう「誰かと共にある」という感覚が、ギターを通じて手に入ります。

「65歳で始めて、もう手遅れ?」という心配について

65歳から始めた男性に講師が左手の形を教えているレッスン風景

体験レッスンで一番多い質問が、これです。

答えはシンプルです——手遅れではないです。

ぼくの教室には、60代・70代で始めた方がたくさんいます。80代の方もいます。みなさん、ちゃんと上達しています。

「若いころの方が覚えが早い」は事実ですが、「大人の方が上達しやすい部分」もあります。

たとえば、忍耐力。大人は「すぐ弾けなくて当然」と理解した上で練習できます。子どもは焦って投げ出しがちですが、大人は「1週間かけてひとつの動きを覚える」という地道な積み上げができます。

また、音楽の理解力。これまでの人生で音楽を聴いてきた耳は、若い人より確かです。「この曲はどういう感情を表しているか」という感性の部分で、大人は強い。

「若い頃のように弾けるか」という比較ではなく、「今の自分が楽しめるか」という視点で考えると、年齢は大きな障壁ではありません。

ぼくがいつも思うのは、定年後にギターを始めた方は「始めなかった後悔」をする人が少ないということです。多くの方が「もっと早く始めればよかった」と言いますが、それでも「始めてよかった」と満足している。

大事なのは始めることです。今日が一番若いですから。

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