こんにちは!
フラメンコギター池川です。
一人で練習しているときは、最後まで踊れる。
なのに、ギタリストと合わせることになった途端、急に訳がわからなくなる。
「あれ?いつもの音が来ない」「歌が思っていた感じと違う」「あれ?今どこ?」
バイレを習っている方から、こういうお話はよく聞きます。ぼくは伴奏する側なので、踊り手さんが一瞬止まる、あの「え?」という表情を、ギターを弾きながら何度も見てきました。
今日は、そんなバイレの練習をしている方へ、伴奏する立場からお話しします。
先に結論を言うと、生伴奏で迷ったからといって、練習が足りなかったとは限りません。見直してほしいのは、練習の回数だけではなく「何を合図にして踊っていたか」です。
1.生伴奏で迷うのは「頼りにしていた目印」が変わったから
生伴奏で迷ったとき、まず考えてほしいことがあります。
「自分は、何の合図をきっかけに次の振りへ進んでいたんだろう?」
たとえば、いつもの音源で練習していたとします。ギターが「ジャララン」と鳴ったら次の振りに入る。そんなふうに覚えていたとしましょう。
ところが、合わせの日にはいつもと違う音が聞こえてきた。
同じ場所まで来ているのに、待っていた音が出てこない。だから次へ行けなくなる。これは本当によくあることです。
ぼくは、道を覚えるときと少し似ていると思っています。
「あの赤い看板を右」と覚えていたら、そのお店の看板が変わった途端に不安になりますよね。でも、道が全部なくなったわけではありません。
頼りにしていた目印が、変わったんです。
だから、音源で練習してきたことが無駄だった、と考えなくて大丈夫です。その練習に、別の目印を足せるかどうか。そこを確かめていきましょう。
生のギターは、同じ曲でも弾く人によって、その日によって、音の選び方が変わります。音源の「ジャララン」がいつも同じ形で来るとは限りません。これはフラメンコの面白さでもあり、踊る側から見ると難しさでもあります。
2.構成は踊りや教室ごとに違う。まず伴奏者と共有する
ここで一つ、大事なことがあります。
フラメンコは、踊りによって、教室によって、実際の構成がまったく違います。歌の数、長さ、次へ進む合図。それぞれバラバラです。
合わせのときにうまくいかなかった。それを全部「自分が聴けていないせいだ」と思ってしまうと、困りごとの場所を間違えてしまいます。
実際には、構成そのものが伴奏者と共有されていなかった、ということもあるからです。
ですから最初に、伴奏者と「今回はどんな構成で踊るのか」をしっかり伝え合う。そのうえで、自分の聴き方を確認していきます。
順番が逆になると、つらくなります。構成がそろっていないのに聴き方だけを責めても、答えは出てきません。
伴奏する側から見ても、事前に構成が分かっているだけで、踊り手さんに合わせやすくなります。遠慮せずに、先生や伴奏者と確認してみてください。
3.迷った場所を一つだけ選んで、紙に三行書く
今日は、一曲全部の構成表を作らなくても構いません。
途中で迷った場所を一つだけ選んで、紙に書いてみてください。
1行目:どこで迷ったか
たとえば「最初の歌のあと、足に入るところ」。これは説明のための例です。皆さんが習っている順番で書いてみてください。
2行目:いつも何を頼りにしていたか
録音のギターのメロディーなのか。先生の腕の動きなのか。「ここまで何秒ぐらい」という感覚なのか。思い当たるものを全部書きます。
かっこいい専門用語は必要ありません。自分に分かれば大丈夫です。
3行目:次に何を確かめるか
たとえば「ここへ入る合図は何か、先生や伴奏者に確認する」。
ここで気をつけたいのは、自分だけで「歌が止まったから入ろう」と決めてしまわないことです。習った振付と音楽の関係を、ちゃんと確かめる。そのための三行です。
そして、その紙を次の合わせへ持っていきます。
「分かりませんでした」だけで終わるより、「ここで、これを頼りにしていて、次はこれを確かめたい」と言えるほうが、先生も伴奏者も一緒に見る場所が分かります。
4.合わせは録音・録画して、落ち着いてから振り返る
実際にギタリストや歌い手と合わせてみたら、事前に分からなかったこと、不安に思っていたことが、できたのか、できなかったのか。それを冷静になって振り返ってみてください。
できれば録画するのが望ましいです。教室の事情で難しい場合は、音だけでも録っておきます。スマホで十分です。
そして、あとで落ち着いてから聴き直してみる。
・自分はどこで迷ったのか
・いつもと違うメロディー、いつもと違う歌だったとしたら、何が違ったのか
・前のギタリストはこういう音だったけれど、今回はこういう音だった
こんなふうに比べていくと、「こういう弾き方もあるんだ」「こういう歌い方、こういう歌もあるんだ」と、自分の中の参考材料が増えていきます。
参考材料が増えれば増えるほど、その曲への理解がぐっと深まります。
生のギタリストや歌い手と合わせる機会は、普段なかなか多くありませんよね。限られた時間を最大限に生かすためにも、録って、振り返る。
ただ「できなかった」と落ち込むのではなく、少しでも前に進むための判断材料にする。ぼくは、これがとても大事だと思っています。
5.同じ曲の音源や映像をたくさん聴いて「聞き覚え」を増やす
もう一つ、ぼくが大事だと思っているのは、とにかくいろいろなフラメンコの音源や映像に触れることです。
今はありがたいことに、YouTubeや、Apple Music、Spotifyといった音楽配信サービスがたくさんあります。
ご自分が今取り組んでいる曲を、ぜひ検索してみてください。その曲はどんなギターなのか。どんな歌なのか。いろいろ聴いてみる。
「こういうメロディーがあるんだ」「こういう歌い方があるんだ」と体の中に入れれば入れるほど、その曲の中に入り込めるようになります。
そして、いつかまた生のギターや歌と合わせたときに、
「このメロディー、なんだか聞いたことがある」
「あの歌い方、聞き覚えがある」
となったら、しめたものです。
一つの音源の、一つの目印だけに頼っていた状態から、「いくつかの形を知っている」状態へ。これが、生伴奏で迷子になりにくくなる近道だと思います。
まとめ:一回迷ったくらいで「向いてない」まで広げなくていい
生伴奏で一回迷ったからといって、「わたし、フラメンコ向いてない。もうやーめた」なんて話まで広げなくて大丈夫です。
まずは、自分が何を頼りに、どんな音を頼りに踊っていたのか。
その一か所が分かれば、先生や伴奏者に相談することも、家で試すことも変わってきます。
今日やることは、この三つだけです。
① 伴奏者と構成を確認する
② 迷った場所・頼っていたもの・次に確かめることを三行で書く
③ 合わせを録って振り返り、同じ曲をいろいろ聴く
皆さんは、生伴奏のどんな瞬間に、一番「今どこ?」となりますか?
「わたしは誰、ここはどこ」の記憶喪失状態になるのは、どのあたりでしょう(笑)。よかったら動画のコメントで教えてください。
▼ 動画でも話しています
生伴奏で迷子になる理由と、次の合わせまでにできることを、伴奏する立場から動画でもお話ししています。文章とあわせてどうぞ。
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