こんにちは!
フラメンコギター池川です。
先日、Spicy Guitar Methodをご購入いただいた方との個別相談セッションをさせていただきました。
この方が、とても素敵だったんです。
老人ホームでボランティア演奏をされていて、
「曲の途中に、フラメンコのスパイスをちょっと入れたいんです」
とおっしゃっていました。
これ、ぼくはかなりグッと来ました。
フラメンコギターを専門的に極めたい、というよりも、
- いつもの曲に、ちょっとだけスパニッシュな香りを入れたい
- 聴いている人に、おっ?と思ってもらいたい
- 自分の演奏に、もうひと味加えたい
そういう動機です。
まさにSpicy Guitar Methodを作った理由のひとつが、そこにあります。
その方は購入時に、
「ドンピシャだと思って!……ちょっと高いかなとも思ったけど(笑)」
とも言ってくださいました。
正直で最高です(笑)。
でも、22,000円の教材ですから、そう感じるのは自然だと思います。
だからこそ、買って終わりではなく、実際に「自分の演奏にどう使うか」までつなげてほしい。
今回の個別相談では、まさにその部分を一緒に見ていきました。
この記事の目次
「ゴルペって、爪?それとも指の腹?」問題
まず出てきたのが、ゴルペの質問です。
ゴルペというのは、ギターの表面板を指で叩いて、打楽器のようなアクセントを入れる奏法です。
これ、よく聞かれます。
「ゴルペって、爪で叩くんですか?」
「それとも、指の腹ですか?」
答えは、ざっくり言うと両方です。
爪だけで叩くと、音が硬くなりすぎて「カキカキ」した感じになります。しかも爪への負担が大きいので、割れやすくなります。
逆に、指の腹だけで叩くと、重みは出るのですが、音が少しもったりして抜けにくくなります。
なので狙う場所は、爪と肉の境界あたり。
ちょうどその中間を当てにいく感じです。
しかもゴルペには、
- 単体で叩くゴルペ
- 音を鳴らしながら叩くゴルペ
- 人差し指で入れるゴルペ
- 中指で入れるゴルペ
- 親指と薬指を組み合わせるゴルペ
など、実はいろいろなバリエーションがあります。
つまり、けっこう奥が深い(笑)。
ぼくが相談の中で実際にデモ演奏してみせると、
「かっこいい!かっこいい!」
と言っていただけたので、ぼくの自己評価は爆上がりしました。
ありがとうございます。
アバニコの「3つ目」が決まらない問題
次に見たのが、アバニコです。
アバニコは、ざっくり言うと3つの動きでできています。
- 親指アップ
- 中指・薬指・人差し指あたりのダウン
- 親指ダウン
この3つの音が連続することで、扇を広げるような華やかなストロークになります。
ただ、この中で多くの方がつまずくのが、3つ目の親指ダウンです。
今回の相談でも、
- 3つ目だけ、当たり方が弱い
- ゆっくりならできるけど、速くなると怖い
- 親指を下に振ろうとすると、なんか引っかかる感じがする
という状態がありました。
これも、ものすごくよくあります。
頭では分かっている。
ゆっくりならできる。
でもテンポが上がると、体がついてこない。
あるあるです。本当にあるある。
「引っかかる感じ」の正体は、爪の裏側だった
「親指を下に振ると、なんか引っかかる感じがして怖い」
この一言で、ぼくはピンと来ました。
そこで聞きました。
「爪、どうやって手入れしてますか?」
すると、
「ヤスリで先端を丸く削っています」
とのこと。
はい、そこです。
爪って、先端の形だけ整えてもダメなんです。
爪は弧を描いて伸びてくるので、爪の裏側、つまり肉と爪の境界あたりにも段差ができます。
その段差に弦が引っかかっていることがあります。
表側から見るときれいに整っているようでも、裏側に小さな段差が残っていると、親指ダウンのときに弦がスムーズに抜けません。
解決策はシンプルです。
ヤスリを爪の裏側にも軽く当てて、肉と爪の境界の段差をなだらかにする。
それだけで、振り抜きやすさがかなり変わります。
実際にその話をしたら、
「言われてみれば……そうだ。ここに引っかかってた!」
という反応がありました。
この瞬間の「目から鱗ボロボロ」が、ぼくは個別相談をやっていて一番好きです(笑)。
アバニコは「指の技」ではなく、腕全体の動きが大事
もうひとつ、アバニコで大事なことがあります。
それは、アバニコを指だけで何とかしようとしないことです。
アバニコというと、どうしても指の動きや手首の回転に意識が向きます。
もちろん、それも大事です。
でも、ぼくの体感では、アバニコは
腕全体の上下運動:手首の回転:指の動き
= 6:2:2
くらいです。
あくまで、ぼくのざっくりした感覚ですが。
腕全体をゆったり上下させる動きがベースにあって、手首と指はそこに乗っかる。
この意識に変えると、音がまとまりやすくなります。
逆に、指だけで全部やろうとすると、疲れるし、音もバラバラになりやすい。
ぼく自身も20代の頃は、ここを勘違いしていました。
やたら力が入る。
すぐ疲れる。
音が揃わない。
速くしようとすると崩れる。
「なんか違う……」
と、ずっとモヤモヤしていました。
でも、腕全体の上下運動がメインなんだと気づいてから、かなり楽になりました。
さらに大事なのは、手のひらを表面板と平行に保つことです。
アバニコをしているうちに、手のひらがくるりと自分の顔の方を向いてしまうと、弦への当たり方が毎回変わってしまいます。
すると、音量もタイミングもバラつきます。
速くする前に、まずは当たり方を安定させる。
ここが大事です。
「1・2」「2・3」「3・1」の分割練習
アバニコの3つの音を均等にするために、ぼくがよくおすすめしている練習があります。
それが、2つずつに分ける練習です。
アバニコの3つの音を、1・2・3とします。
それを、
- 「1と2」だけ
- 「2と3」だけ
- 「3と1」だけ
に分けて練習します。
たとえば、
1と2だけを弾く。止まる。
2と3だけを弾く。止まる。
3と1だけを弾く。止まる。
これを、それぞれ同じ音量・同じタイミングになるまで繰り返します。
特に大事なのは「3と1」です。
3つ目の親指ダウンから、次の1つ目の親指アップにつながるところ。
ここがガタつくと、アバニコ全体がブツブツ切れて聞こえます。
逆に、このつなぎ目がなめらかになると、3つの音がひとつの流れとして聞こえてきます。
地味です。
頭も使います。
でも、かなり効きます。
こういう練習は、ただ動画を見ているだけだと見落としやすいところです。
その方の手の動き、爪の状態、力の入り方を見ながら、
「たぶん、ここです」
と一緒に探していく。
個別相談の良さは、まさにそこにあります。
老人ホームの利用者さんをびっくりさせてほしい
今回の相談で、ぼくが一番いいなと思ったのは、技術そのものよりも、その方の使い道でした。
老人ホームでボランティア演奏をされている。
そこで、いつもの曲の途中に、ちょっとだけフラメンコの要素を入れたい。
たとえば「伊豆の踊子」を弾きながら、途中でゴルペを少し入れてみる。
最後にアバニコでジャーンと決めてみる。
それだけで、会場の空気が変わります。
- おっ、今の何?
- なんか急にスペインっぽくなった
- かっこいいね
そんな反応が生まれるかもしれません。
ぼくは、そういう使い方がすごく好きです。
完全にフラメンコに染まらなくてもいいんです。
フラメンコギタリストにならなくてもいい。
今、自分が弾いている曲に、少しだけ香りを足す。
いつもの演奏に、ちょっとだけ色気や熱を加える。
それだけでも、音楽はかなり変わります。
Spicy Guitar Methodは、まさにそのために作った教材です。
フラメンコは「全部変える」ものではなく、「少し足す」だけでも効く
フラメンコというと、どうしても難しく感じるかもしれません。
- コンパスが難しい
- 奏法が特殊
- 専門的に学ばないといけない
- 自分にはまだ早い
そう思う方も多いと思います。
もちろん、深く学べばいくらでも奥があります。
でも、最初の一歩はもっと軽くていい。
いつものコード進行に、スパニッシュな響きを少し足す。
ラスゲアードを1回だけ入れる。
ゴルペをサビ前にひとつ入れる。
ルンバのリズムを少し混ぜる。
最後のコードだけ、フラメンコっぽく決める。
それだけでも、演奏の印象は変わります。
大事なのは、全部をフラメンコにすることではありません。
自分の演奏に、必要な分だけスパイスを入れることです。
料理と同じです。
スパイスを入れすぎると、全部その味になります。
でも、ちょうどいい量を入れると、素材そのものが引き立ちます。
ギターも同じです。
自分の好きな曲、自分の得意な演奏、自分の持っている音楽。
そこにフラメンコの香りを少し足す。
それで十分おもしろいんです。
今回の個別相談で扱ったこと
今回の相談では、主にこんなことを見ていきました。
- ゴルペは爪と肉の境界あたりで当てる
- 爪だけ、指の腹だけに偏らない
- アバニコの親指ダウンが引っかかる原因は、爪の裏側の段差かもしれない
- アバニコは指だけでなく、腕全体の上下運動が大事
- 手のひらは表面板と平行に保つ
- 1・2、2・3、3・1の分割練習でつなぎ目を均等にする
こうして並べると、かなり細かいですよね。
でも、演奏を変えるのは、だいたいこういう細かいところです。
- なんかうまくいかない
- 動画と同じようにやっているつもりなのに、音が違う
- 力を抜けと言われても、どこをどう抜けばいいのかわからない
そういうモヤモヤは、本人の才能不足ではありません。
原因が見えていないだけです。
原因が見えると、練習の方向が変わります。
方向が変わると、30分でもけっこう変化が起きます。
今回も、ほんの短い時間の中で「目から鱗ボロボロ」な瞬間が何度かありました。
ぼくとしても、とても楽しい時間でした。
楽譜通りの、その先へ
Spicy Guitar Methodは、難しいフラメンコ曲を1曲丸ごと仕上げるためだけの教材ではありません。
もちろん、フラメンコの奏法や響きはたくさん扱います。
でも本当の目的は、
楽譜通りに弾けるようになったその先で、自分の演奏にどう応用するか。
そこにあります。
コード、奏法、リズム、メロディ。
フラメンコを構成する要素を、ひとつずつ素材として覚える。
そして、その素材を自分の曲、自分の伴奏、自分の演奏に少しずつ混ぜていく。
いきなり自由にアドリブする必要はありません。
まずは1つのゴルペから。
まずは1つのラスゲアードから。
まずは最後のコードの響きを変えるところから。
その小さな一歩で、演奏は変わります。
「いつもの曲に、少しだけフラメンコの香りを加えてみたい」
「楽譜通りのその先へ進んでみたい」
そんな方のために作った教材です。
ではー!























