こんにちは!
フラメンコギター池川です。
舞台の始まり。ギターは鳴っていない。聞こえてくるのは歌だけ。
やがてギターが入ってきて、シギリージャになって、最後まで踊りきる。発表会でもプロの舞台でも、よく見る光景です。
踊りを習っている人
池川今日は、メールマガジンでいただいた質問をもとに、マルティネーテとシギリージャの関係と、踊りに入れるときの決めごとをお話しします。
▼ 動画でも話しています
舞台でよく見る「ギターのない始まり」について、歌の成り立ちから順にお話ししています。再生しながら読んでも、先に見てからでも大丈夫です。記事はこの下に続きます。
マルティネーテは、ギターなしで歌う古い歌

フラメンコには、ギターの伴奏をつけずに歌う、古い歌のグループがあります。「トナ」と呼ばれる仲間です。トナ、マルティネーテ、デブラ、カルセレーラなどがあります。共通点はギターがつかないこと。スペイン語で「ア・パロ・セコ」、伴奏なしで声だけで歌う、という意味です。少なくとも18世紀には歌われていたとされる、とても古い歌です。
マルティネーテという言葉は、鍛冶場の大きなハンマーを指す言葉から来ています。鍛冶の仕事をしていたヒターノの人たちと結びつけて語られてきた歌で、舞台で金槌と金床の音が入るのはそのためです。ただ、実際にハンマーを振りながら歌った仕事の歌だったのかは、はっきりしていません。歌詞は4行で一塊りです。
「短い」と感じる方もいると思いますが、ギターの前奏も間奏もありません。4行の歌を1つか2つ歌えば、それで1曲です。短く感じるのは自然なことなんです。
シギリージャとの関係を、3つに分けて

- 別の曲です。シギリージャはギターの伴奏がつく曲、マルティネーテはつかない曲。ここがいちばん大きな違いです。
- どちらも重くて古くて深い歌の代表です。悲しみや痛みを伴うという点で、2つはとても近い場所にあります。
- リズム、つまりコンパスでつながります。これが踊り手にとっていちばん大事です。
マルティネーテは、もともと決まったリズムがなくても歌える歌です。でも踊りや舞台でリズムをつけるときは、シギリージャのコンパスで歌われることが多い、と言われています。シギリージャは、12拍を2・2・3・3・2の5つの塊で感じるリズムです。マルティネーテをこのリズムに乗せると、そのままシギリージャにつなげられる。だから「マルティネーテで入ってシギリージャへ」という構成が生まれるんです。
ギターがなく、歌と足や金槌の音だけの部分はマルティネーテ。ギターが入ってからはシギリージャ。舞台を見るときは、このつなぎ目を探してみてください。
踊りになったマルティネーテ

もともと歌だけのものだったマルティネーテを、初めて踊りにしたのが、アントニオ・ルイス・ソレルです。1952年のスペイン映画のために作った作品が、踊られたマルティネーテの第1号とされています。このとき、シギリージャのリズムを使って振り付けたと説明されています。それ以来、マルティネーテは踊り手に好まれるようになり、今ではたくさんの振付があります。
プログラムに「マルティネーテ・シギリージャ」と書いてあるときは、両方が入っているという意味です。「マルティネーテ」とだけ書いてあって、後半はシギリージャになっていることもあります。公演の曲名の書き方には決まったルールがなく、作品の始まりや、いちばん印象的な部分の名前で書くこともあるからです。
踊りに入れるとき、リハーサルで決める3つのこと

ぼくが伴奏していると、リハーサルで「最初はマルティネーテの歌からお願いします」「エスコビージャで止まったら、マルティネーテの歌をお願いします」といった構成を聞きます。冒頭にも途中にも使えます。ソレアなどの途中で「リブレの歌をお願いします」と言われることがありますよね。リブレとは、リズムのない、自由に歌われる歌のこと。マルティネーテを途中に入れるのも、場所としてはそれに近いと考えていいと思います。
ただ1つ違いがあります。リブレの歌はリズムから自由ですが、マルティネーテは、自由に歌うこともできるし、シギリージャのコンパスに乗せて歌うこともできます。そこで、リハーサルでは次の3つを決めておくと安心です。
- 自由にリブレで歌うのか、シギリージャのコンパスに入れて歌うのか。ここで踊り方が大きく変わります。
- 歌を何回歌うのか。1つの塊なのか2つなのか、1回なのか2回なのか。
- ギターが入ってくるきっかけ。歌が終わったら入るのか、足の合図で入るのか。
踊りを習っている人
池川舞台を見るとき・練習のときに
- □ 舞台でギターが入る瞬間を探してみた
- □ マルティネーテはリブレか、コンパスに乗っているか聞き分けた
- □ 歌の回数とギターが戻るきっかけを、先生に確認した
- □ 踊り手自身がリズムを持つ部分を、練習で確かめた
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