こんにちは!
フラメンコギター池川です。
「踊らないと、フラメンコを始めちゃダメですか?」
体験レッスンで、意外とよく聞かれる質問です。フラメンコと聞くと、赤い衣装で踊る姿が最初に浮かびますよね。テレビでもポスターでも、主役はたいてい踊り手です。
でもフラメンコは、踊りの名前というより「歌・踊り・ギターが同じリズムの中で会話する音楽」です。だから入口は一つではありません。ギターの音から入っても、歌から入っても大丈夫です。
そして、ここでいうギターは鉄弦のアコースティックギターではなく、ナイロン弦のフラメンコギター。見た目が似ていても、音の立ち上がりや役割はかなり違います。今日は、その違いも含めて3つの面白さをお話しします。
1.三つの楽器ではなく、三つの「役割」が会話する

フラメンコを形づくる中心は、カンテ(歌)、バイレ(踊り)、トーケ(ギター)の三つです。ただし、三人が同時に好きなことをするわけではありません。歌が物語の温度を運び、踊りがリズムを目に見える形にし、ギターが二人の呼吸をつないで「帰る場所」を作ります。
たとえば歌が長く伸びたら、ギターは先へ急がずに待つ。踊り手が強い足を打つ前には、少し空間を作って合図を受け止める。楽譜を正確になぞるより、相手の一言を聞いて返事をする感覚に近いんです。
この会話は、大きな機材がなくても始められます。自宅ならカンテは立ちマイクを使わず、そのままの声で十分。手拍子と声とギターだけで、リズムの受け渡しを練習できます。大切なのは音量ではなく、同じコンパスへ戻れることです。
2.フラメンコギターは、アコギを速く弾く楽器ではない

フラメンコギターは、鉄弦のアコースティックギターを激しく弾く楽器ではありません。基本はナイロン弦で、ヘッドには縦長の溝があり、弦を結ぶブリッジを使います。表面には指や爪で叩くための透明なゴルペ板が貼られ、音が素早く立ち上がって、短く乾いて消えるように作られています。
だから、最初に目指すのは大きな音でも速弾きでもありません。低音を一つ鳴らし、右手で止める。次に同じコードへアクセントを一つ置く。それだけで、音に輪郭が生まれます。ぼくは初めて乾いた「ジャラン!」が出た日を、勝手に「初ジャラン記念日」と呼んでいます(笑)。
まだ楽器がない人は、先に手拍子で「音を出す場所」と「止める場所」を作ってみてください。フラメンコらしさは、コードの数よりも、音を出して止めるタイミングに宿ります。
3.一人練習のゴールは、一曲弾くことより「合図を一つ返す」こと

一人で練習していた人が初めて踊り手や歌い手と合わせると、多くの人が「同じコードなのに別の音楽みたい」と驚きます。自分の一音が、相手の次の動きにつながるからです。
合わせるために必要なのは、最後まで一曲を弾き切ることより、短い合図を聞いて同じ場所へ戻ること。まずは四拍を止まらずに刻む。次に、相手が止まったら一緒に止まる。この小さな返事ができると、もう合奏の入口です。
踊らなくても、フラメンコの輪には入れます。ギターが一つの合図を返すから、歌や踊りが安心して次へ進める。好きな音から始めて、少しずつ会話の仲間になってください。
フラメンコの入口は一つではありません。踊りに憧れなくても、フラメンコギターの乾いた一音に心が動いたなら、それが立派な始めどきです。
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