こんにちは!
フラメンコギター池川です。
「もっと歌を聴いて踊って」
レッスンでそう言われて、とりあえず「はい」と答える。
でも心の中では、「聴いてるつもりなんだけどなぁ……」「何を、どう聴けばいいんだろう」。
バイレを習っている方なら、一度はそんな気持ちになったことがあるのではないでしょうか。
フラメンコの歌、カンテが大事なことは、もちろん知っている。でも実際には、振り付けを思い出しながら足を打って、手も動かして、そのうえで歌も聴く。頭の中は大渋滞です。忙しいですよね。
今日は、歌を聴く練習を3回に分けて、踊らずに座ってやってみるというお話です。いきなり全部を聴こうとしない、最初の一歩です。
1.歌詞を全部わからなくても、「音の出来事」は追える
最初にお伝えしたいのは、歌詞を全部訳せたり、メロディーを正確に歌えたりする必要はない、ということです。
歌詞の内容を知ることも、もちろん大事です。でも、その勉強が終わるまで、耳の練習を待たなくていいんです。
たとえば、外国の映画を観ているとき。言葉はわからなくても、
「誰かが話し始めた」
「まだ話が続いている」
「相手が答えた」
というニュアンスは、なんとなくわかりますよね。
カンテでも、まずはこの「音の出来事」を追ってみます。
使う音源は、今習っている曲の練習音源がいちばんです。特にそういうものがなければ、YouTubeの映像や音源をひとつ選んでも構いません。
その中から、歌が入る少し前から、歌のひとまとまりを含む短い区間を選びます。
自分で区切りがわからなければ、先生に「ここからここまで聴くといいよ」と教えてもらえそうなら、その部分で全く構いません。
ひとつだけ気をつけてほしいのは、短くしたいからといって、声の途中で切ってしまわないこと。歌が始まる前のギターから、歌がひと区切りつくところまでを入れておきます。
準備はこれだけです。では、同じ区間を3回聴いていきましょう。
2.1回目:歌が入るところに「丸」をつける
1回目は、歌が入るところだけに集中します。
音源を流して、歌声が入ったら紙に丸をつける。紙がなければ、指で小さく合図するだけでも大丈夫です。
ここで大事なのは、今は「振り付けを始めるタイミング」を決めているのではない、ということ。
「ここから歌が聞こえた」と気づく練習です。
これ、よくあるのですが、ハレオ(掛け声)と歌の始まりが混ざってしまうことがあるんです。
「歌が始まった!」と思ったら掛け声で、その後に本当の歌が始まった。そんな感じですね。
だから、歌が始まった瞬間を、自分でちゃんとわかっているかどうか。まずはそこを判断します。
わかった方は、そのまま2回目へ。
わからなかった方は、歌の前のギターからもう一度聴いてみましょう。映像があるなら、最初は歌い手さんを見て確認してもいいです。そのあとで、音だけでも気づけるか試してみてください。
3.2回目:声が続いている間を「線」で引く
2回目は、声の続き方です。同じ区間を、もう一度流します。
歌が伸びているところは、紙に線を引いていく。歌が途切れたと思ったら、線を止める。また歌が聞こえたら、また線を引く。
これは楽譜を作っているわけではありません。自分の耳で何を追えたか、その跡を残すだけです。線が少し長くなったり短くなったりしても、今は気にしなくて大丈夫です。
ここで気をつけたいのが、声が一瞬止まったとしても、歌のまとまりが終わったとは限らないということです。
歌い手さんは息を継いで、また続けることがあります。
さらに、たとえばシギリージャやカーニャなどでは、歌と歌の間にファルセータ(ギターのメロディー)が入ったり、力強い足技が入ったりして、そこからまた歌が続きます。
これがついつい「1つ目の歌」「2つ目の歌」と数えられやすいのですが、実はひとつの歌が前半部分と後半部分に分かれているだけ、ということもあるんです。
線を引いてみると、「ここで止まったけど、まだ続いていた」という場所が見えてきます。今どの部分を歌っているのかを把握しておくことは、踊るうえでも大切です。
止まった場所がひとつの歌の途中なのか、区切りなのか、自分で判断がつかないときは、それ自体が先生に聞くポイントになります。
4.3回目:歌とギターを一緒に聴いて、気づいたことを一つ言葉にする
3回目は、歌とギターを一緒に聴いてみましょう。
さっき線を止めた場所の前後で、ギターはどんな音を出しているでしょうか。
・声に重なって鳴っている
・声が止まったあとに、ギターがよく聞こえる
・そして、また歌が始まる
気づいたことを、一つだけ言葉にしてみます。
「この歌のあと、ギターが答えるように聞こえた」
そんな言い方で全く構いません。コード名や専門用語で説明できなくても大丈夫。聴いていた場所を示せれば、それで十分です。
そして、歌だけを追った2回目と、ギターも一緒に聴いた3回目。同じ録音なのに気づくことが違ったら、その違いも覚えておいてください。
「全部聴かなきゃ」とすると、かえって何も残らないことがあります。まずは歌。その次に、歌の前後にあるギター。聴く範囲を少しずつ増やす感じです。
5.印をつけた場所を、お手本の振り付けとつなげる
では、これをどう踊りにつなげるのか。
先生のお手本や、自分の練習動画を見て、さっき印をつけた場所で、どんな振り付けをしているのかを確かめます。
「歌が伸びている間、ここを踊っているんだな」
「ギターがよく聞こえるところで、次の場面に進んでいるんだな」
一曲全部ではなく、今習っている曲の具体的な一か所でつなげてみます。
ここで知っておいてほしいのは、先生が「歌を聴いて」と言ったとき、それが指しているものはひとつとは限らない、ということです。
入りのタイミングのことかもしれません。歌い手さんが出している感情を受け止めてほしい、ということかもしれません。
今日の3回の練習だけで、その言葉の意味を全部説明したことにはなりません。
でも、「この場所では、歌のどこに注目するといいですか?」と先生に聞く準備にはなります。何となく「はい」と答えていたときより、ずっと具体的な会話ができるはずです。
それから、別の歌い手さんになれば、同じ歌でも違って聞こえることがあります。今の録音の秒数や線の長さを、全部の歌に当てはめなくていいんです。目の前の歌を聴くために、今の録音を練習相手にする。そんなイメージで使ってください。
まとめ:できたかどうかは「聴いたことを一つ言えるか」で確かめる
今日の練習ができたかどうかは、歌を完璧に理解できたかではなく、聴いたことを一つ言えるかで確かめてください。
「声が一度止まって、また続いた」
これも立派な発見です。
「歌がどこでまとまるのか、まだわからない」「どこで止まるのか、まだわからない」。それでも、その場所を指させるなら、次の質問ができます。
踊りながら聴くのが難しい日は、いったん踊ること自体をお休みして、耳に少し仕事を渡してみましょう。
今日やることは、短い区間を3回聴くだけです。
① 1回目:歌の入り口に丸をつける
② 2回目:歌が続いている間に線を引く
③ 3回目:歌とギターの関係を一つ言葉にする
皆さんが「歌を聴いて」と言われたとき、一番知りたいのはどんなことですか? よかったら動画のコメント欄で教えてください。
▼ 動画でも話しています
座ってできるカンテの聴き方3ステップを、動画でもお話ししています。音源を用意して、一緒に1回目から試してみてください。
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