こんにちは!
フラメンコギター池川です。
「自分の演奏を録音した方がいいのは、わかっています。でも、聴くのが恥ずかしくて消してしまいます」
これはレッスンで本当によく聞く悩みです。
録音ボタンを押すまでは、けっこう気分よく弾いていたはずなのに、再生した瞬間に「あれ? さっきまでの名演はどこへ?」となる(笑)。スマートフォンの中にだけ、やけに正直な審査員が住んでいるように感じます。
でも、録音は自分を落ち込ませるためのものではありません。今の演奏と、次に直す一つをつなぐための道具です。
しかも毎日やる必要はありません。週1回、60秒で十分です。
この記事では、ギター練習の録音が恥ずかしい人でも続けられる方法を、準備、聴き方、フラメンコで確認する項目まで順番にまとめます。
この記事の目次
録音が恥ずかしいのは、下手だからではありません

演奏中の頭は、想像以上に忙しく動いています。
左手は次のコードを探し、右手は弦に当てる角度を調整し、足ではコンパス(リズム)を取り、曲の順番も思い出しています。その状態で、客席にいる人のように全体を聴くのは難しいのです。
弾きながら聞こえている音には、指先の感覚や「こう弾きたい」というイメージも混ざります。録音では、その感覚が外れて音だけが残ります。
だから違って聞こえるのは当然です。
録音を再生して違和感があったからといって、「実はずっと下手だった」という話ではありません。演奏者の席から、いったん聴き手の席へ移動できたということです。
最初の違和感は、故障ではなく距離です
自分の声を録音で聴いたとき、普段と違って聞こえた経験はありませんか。ギターも似ています。楽器のすぐ近くで体に伝わる響きと、少し離れたスマートフォンが拾う音は同じではありません。
ここで大切なのは、音質の良し悪しを細かく裁かないことです。最初は「止まらず弾けたか」「拍が大きく崩れなかったか」だけで十分です。
高価なマイクも録音ソフトもいりません。練習の確認なら、スマートフォンのボイスメモで始められます。
週1回・60秒だけなら続けられる

録音が続かない一番の理由は、録音そのものを大仕事にしてしまうことです。
曲を最初から最後まで完璧に弾く。良い音で録る。ミスをしたら最初からやり直す。これを全部やろうとすると、録音ボタンが本番の赤いランプに見えてきます。
そこで、ぼくがおすすめするのが「週1回・60秒・一発だけ」です。
- 今週練習している一つのフレーズを決める
- スマートフォンを1〜2メートル離して置く
- 60秒だけ、止まってもそのまま録る
- 一度だけ聴き、次の一回で直す点を一つ決める
撮り直しは禁止ではありません。ただし、最初の一回を消さないでください。うまくいかなかった録音ほど、来週の比較材料になります。
録音する場所は毎回だいたい同じにする
比較しやすくするため、スマートフォンの置き場所と距離はなるべくそろえます。椅子の正面、少し右側、机の端など、決めやすい場所で構いません。
部屋や距離が毎回大きく変わると、演奏より録音条件の差が目立ちます。音質を競うのではなく、先週の自分と比べるための小さな定点観測だと思ってください。
ファイル名も「曲名_日付」だけでOKです。あとで探しやすくなり、4週間分が並んだときに成長が見えます。
録音したその場で、ギターを置いて聴く
録音を聴くときは、いったんギターをスタンドへ置きます。ギターを抱えたままだと、気になった場所をすぐ弾き直したくなり、最後まで聴けません。
最初の再生ではメモを取らず、60秒を通して聴きます。二回目だけ、選んだ一項目に注目します。コンパスを見る週ならコンパスだけ。音量を見る週なら音量だけです。
イヤホンでもスマートフォンのスピーカーでも構いません。ただし大きな音で細部を探しすぎると、弦の擦れる音ばかり気になってしまいます。普段会話を聞くくらいの音量で、曲の流れを先に確認しましょう。
減点法をやめて「差分法」で聴く

録音を聴いて落ち込む人は、再生と同時に減点を始めています。
ここが汚い。音が弱い。テンポが揺れた。プロの演奏と全然違う。これでは60秒の中から、落ち込む材料を全力で探していることになります。
おすすめは減点法ではなく「差分法」です。
見るのは、前回との違いだけ。ノートには次の3行だけ書きます。
- よくなったこと:一つ
- 気になったこと:一つ
- 次の一回で試すこと:一つ
たとえば「コードを変える場所で止まらなくなった」「最後の2拍だけ走った」「次は足の拍を小さく踏む」のように、観察できる言葉で書きます。
「下手だった」はメモになりません
「下手」「センスがない」「向いていない」は、次の練習へつながらない言葉です。
反対に「3つ目のコードで右手が止まる」「ラスゲアードの後だけ音量が急に大きくなる」なら、直す場所がわかります。
録音は判決ではなく、地図です。現在地が少し気に入らなくても、次に進む方向が見えれば役目を果たしています。
誰かへ聴かせる必要もありません。SNSへ出すための録音と、練習を直すための録音は別物です。練習用は、うまくいかなかった一回も含めて自分だけの資料にしておけば十分です。
フラメンコギターは4項目だけ確認する

録音から何を聴けばよいかわからない人は、毎回この4項目に絞ってください。
1. コンパスの入口と出口
フレーズの最初が拍に乗っているか。終わったあと、次の拍へ自然に戻れているか。途中の細かなミスより、入口と出口がつながっている方が伴奏では大切です。
2. ミスしても流れが止まらないか
一音を外した瞬間に演奏全体が止まっていないかを聴きます。フラメンコでは、正しい音を探して沈黙するより、基本のコードへ戻ってコンパスを続ける方が周りを助けます。
3. 音量が急に飛び出していないか
ラスゲアードだけ大きすぎないか。弱く弾く場所が全部同じ音量になっていないか。スマートフォンの録音でも、大きな音量差は十分わかります。
4. 音の輪郭がそろっているか
完璧な音色を求める必要はありません。同じフレーズの中で、特定の弦だけ強く当たる、開放弦が余計に残る、といった違いを一つ探します。
一回の録音ですべて直そうとしないでください。今週はコンパス、来週は音量というように、一項目ずつ選ぶ方が変化を確認しやすくなります。
4週間で「自分専用の先生」が残る

週1回の録音を4週間続けると、4本の記録が並びます。
そのとき、最新の一回だけを聴かず、1週目と4週目を続けて再生してみてください。毎日の練習では気づかなかった変化が見つかります。
コードを変える間が短くなった。足とギターのずれが小さくなった。ミスのあとに戻るのが早くなった。音量の山が作れるようになった。
どれも、昨日と今日では見えにくい変化です。録音は「できていないところ」を保存するだけでなく、「できるようになった証拠」も残してくれます。
反対に、4週間たっても同じ場所で止まるなら、それも大切な発見です。その場合は曲全体を何度も通すより、止まる直前の2小節と、止まったあとの2小節をつないで録ります。問題の場所だけでなく、入る前と出たあとを一緒に練習すると、流れの中で戻りやすくなります。
レッスンでも、録音を持ってきてもらえると話が具体的になります。「なんとなく弾きにくい」ではなく、「ここで拍がずれます」と一緒に確認できるからです。先生に見てもらう場合も、自分で練習する場合も、録音があると次の一手が短くなります。
ぼくはこれを勝手に「ポケットの中の正直な先生」と呼んでいます(笑)。少し正直すぎる日もありますが、週1回なら仲良くできます。
今日やることは、上手に弾くことではありません。
スマートフォンを置き、60秒だけ録音する。そして「前回よりよくなったこと」を一つ見つける。それで十分です。
恥ずかしさが消えてから録音するのではなく、短い録音を重ねるうちに恥ずかしさが小さくなっていきます。
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