カマロン・デ・ラ・イスラの人生|貧しい少年の声がパコと出会い、41年で時代を動かすまで

こんにちは!

フラメンコギター池川です。

1枚のレコードジャケットに写った、細身の少年。

その声を聞いた瞬間に、フラメンコの見え方が変わってしまった人がたくさんいたと言われています。

フラメンコが好きな人フラメンコが好きな人
カマロンって名前はよく聞くんですけど、どんな人だったんですか?
池川池川
歌い手として、フラメンコの歴史に大きな足あとを残した人です。生い立ちから順にお話ししますね。

今日は、「知っておきたいフラメンコの100人」の2人目、カマロン・デ・ラ・イスラの声がどんな暮らしから生まれ、誰と出会い、どんな41年を駆け抜けたのかを、動画でお話しした内容にそってまとめます。

▼ 動画でも話しています

カマロンの人生を、出会いやエピソードとともに、じっくりお話ししています。再生しながら読んでも、先に見てからでも大丈夫です。記事はこの下に続きます。

「小さなエビ」と呼ばれた少年

図解:小さなエビと呼ばれた少年

カマロン、本名ホセ・モンヘ・クルスは、1950年12月5日、スペイン・カディス県のサン・フェルナンドに生まれました。歌の血を引く家系で、大勢の兄弟の中で育っています。

父が早くに亡くなって家計が苦しくなり、幼いカマロンは、まだ小さいうちから宿場などで歌って家を助けていたと伝えられています。細くて華奢な体つきから、叔父さんに「カマロン(小さなエビ)」とあだ名をつけられ、それがそのまま芸名になりました。

10代の終わりにはマドリードへ渡り、1968年に有名なタブラオ、トレス・ベルメハスの専属になって、本格的に舞台に立つようになります。

パコ・デ・ルシアとの出会いと9枚のアルバム

図解:パコとの出会いと9枚のアルバム

この場所で、運命の出会いが待っていました。ギタリスト、パコ・デ・ルシアです。きっかけを作ったのは、パコのお父さんでした。息子の演奏の相手として評判になっていた若い歌い手に、声をかけたと言われています。

1969年、2人はレコードデビューします。ここから1977年まで、9枚のアルバムを一緒に作りました。カマロンの歌と、パコのギター。この組み合わせが、その後のフラメンコの歌い方を大きく変えていったと言われています。

1976年には結婚し、4人の子どもに恵まれました。有名になるほど大きな仕事の誘いも増えましたが、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーからの共演の話も、ジプシー・キングスの南米ツアーの誘いも、断ったと伝えられています。名声よりも、大事にしたいものがはっきりしていた人だったのかもしれませんね。

ここがポイント
カマロンは歌い手、パコはギタリスト。立場の違う2人が、9枚のアルバムをかけてフラメンコの空気を変えていった、という見方があります。

1979年、新しい扉を開いた1枚

図解:新しい扉を開いた1979年

9枚をパコと歩んだあと、1979年に、大きく違う1枚を出します。『ラ・レジェンダ・デル・ティエンポ』です。プロデューサーはリカルド・パチョン。ギターには若きトマティート。そこに、それまでのフラメンコにはいなかった顔ぶれも加わりました。歌う言葉には、ロルカの詩が選ばれています。

この1枚は、発売当初、伝統的なフラメンコを愛する人たちから戸惑いをもって迎えられたと言われています。それまでのカマロンを好きだった人ほど、驚きは大きかったはずです。けれど時間が経つにつれ、この作品は、新しい流れ「ヌエボ・フラメンコ」の出発点として語られるようになります。

フラメンコが好きな人フラメンコが好きな人
伝統を大事にしながら、新しいこともやったんですね。
池川池川
そうなんです。伝統の歌い方を大切にしながら、その外側にある音とも臆せず組む。その姿勢が、フラメンコを聞く人の幅を広げていきました。

これ以降は、トマティートが相棒になります。意欲的な作品を重ねていきました。

最後のアルバムと、41年の生涯

図解:最後の1枚と41年の生涯

1989年、カマロンは肺がんの診断を受けます。それでも歌うことはやめませんでした。1992年、最後のアルバムの制作が始まります。ギターとプロデュースを務めたのは、久しぶりに戻ってきたパコでした。制作には1年以上かかり、すでに体調を崩していたカマロンの声には、それまでと違う響きが刻まれています。苦しみながら歌った。それゆえに重みを増した作品だと伝えられています。

同じ年の7月2日、カマロンはバルセロナ近郊の病院で息を引き取りました。41歳でした。故郷サン・フェルナンドで行われた葬儀には、約10万人が集まったと伝えられています。晩年から亡くなったあとにかけても、その功績をたたえる動きが続き、2021年には、生まれ故郷にその生涯をたどる博物館も開かれたと伝えられています。

海辺の小さな町で歌い始めた少年が、パコ・デ・ルシアという相棒を得て世に出て、自分の道を切り開き、家族を大切にしながら、41年の生涯を駆け抜けた。ひとつの声が時代をどう動かせるかを教えてくれる物語だと、ぼくは思います。

カマロンを聞くときの手がかり

  • □ パコ・デ・ルシアと共に作った9枚のアルバムを1曲聞いてみた
  • □ 『ラ・レジェンダ・デル・ティエンポ』の前と後で、聞こえ方が違うか比べた
  • □ 最後のアルバムで、声の響きの違いを感じた
  • □ 印象に残った出来事を、1つ言葉にした

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