こんにちは!
フラメンコギター池川です。
「長年クラシックギターをやっていたんですが……フラメンコってどのくらい違うんですか?」
体験レッスンでよく聞かれる質問です。
クラシックギターを長年やってきた方がフラメンコを始めると、最初の数ヶ月は「え、これってどういうこと?」と戸惑う場面が続くことがあります。
でも安心してください。その戸惑いのほとんどは「違う文化に入った最初の驚き」であって、クラシックの経験がマイナスになるわけではありません。
今日は、クラシックギター経験者がフラメンコを始めるときによく戸惑う5つのポイントを、正直にお伝えします。
① 「楽譜がない!何を見て弾けばいいの?」という最初の壁

クラシックギターをやってきた方が最初に驚くのが、フラメンコの教え方です。
ぼくのレッスンでは、楽譜を使うこともありますが、基本は使いません。
音を鳴らして、弾いてみせて、耳と目で覚えてもらう。これがフラメンコの基本的な学び方です。
ある生徒さん(60代・クラシック歴30年)がこんなことを言っていました。
「楽譜がないと、どこに向かっているかわからなくて不安で…」。気持ちはよくわかります。
でも、これはフラメンコが「口伝の音楽」だからなんです。スペインで何百年も踊り手や歌い手と一緒に積み上げてきた、耳と体の文化。楽譜に落とすよりも前に、音を「感じて」「反応する」力を育てます。
最初は慣れないかもしれませんが、これが体に入ってくると、むしろ自由になったような感覚を覚える方が多いです。
② リズムが主役——「歌や踊りに合わせる」感覚に慣れるまで

クラシックギターでは、ギターが主役のことが多いですよね。
フラメンコは違います。ギターは「踊り手や歌い手を支える楽器」。リズム(コンパスと言います)を刻み続けることが、何よりも大切です。
「音符通りに弾く」より「踊り手の一歩に合わせて弾く」感覚。これがクラシック経験者には最初、なかなかなじまないことがあります。
「弾きながら踊り手を見るって、どうやって?」——そう言ったのは、元プロのクラシックギタリスト(40代・男性)でした。技術はある。でも「音楽の中心が自分ではない」感覚が難しい、と。
ここは正直、時間がかかります。でも一度体に入ると、音楽への向き合い方がガラッと変わります。ぼく自身、フラメンコで踊り手や歌い手と演奏したとき、音楽がぜんぜん違って聞こえるようになりました。
③ 右手の奏法がまるで違う——ラスゲアードとゴルペの衝撃

クラシックギターでは、右手は基本的に「上から下へ弦をはじく」動作が多いですよね。
フラメンコには、ラスゲアード(指を広げて弦をパラパラと掻き鳴らす技法)とゴルペ(ギターの表板を指で叩く打音)があります。
クラシックをやってきた方は、右手の形がきれいに整っています。それ自体はすばらしい。でもラスゲアードは「崩す」動作なので、最初は「壊してしまう気がして怖い」という声をよく聞きます。
ゴルペも「ギターを叩く」行為がどこかハードルに感じる方が多い。「楽器を傷つけているような気がして…」と言った方もいました。
でも、フラメンコギター(フラメンコタップ板つきのもの)はゴルペのために設計されています。しっかり叩いて大丈夫です。これもレッスンで一緒に慣らしていきましょう。
④ クラシックの技術は「使える」——読み替え表

「クラシックをやってきたのに、最初からやり直しになるんですか?」と聞かれることがあります。
答えはNoです。むしろ、かなり有利なことが多い。
ぼくが実際にクラシック経験者の方を教えてきてわかったことを、こんなふうに整理しています。
- 音程感・和音感:そのまま使える。コードの理解が早い
- 右手のタッチ(アポヤンド・アルアイレ):フラメンコにもある。技術の基礎が応用できる
- 左手の正確さ:フラメンコのリガードやトリノーテに直結する
- 姿勢・椅子への座り方:フラメンコも椅子に座って弾く(足台ではなくアルター・ア・ラ・エスパニョーラに変わる)
- 楽曲を「通して弾く」集中力:発表会や練習会でそのまま活きる
「クラシックをやっていた人はコツを掴むのが早い」——ぼくはそう感じています。だから、戸惑いはあっても、心配しすぎなくて大丈夫です。
⑤ 「間違えてはいけない」感覚を、少しだけ手放すこと

クラシックギターは、楽譜通りに正確に弾くことが基本です。そのために厳しく練習してきた方も多いと思います。
フラメンコにも正確さは大切ですが、求められるものが少し違います。
コンパス(リズム)が崩れないこと、踊り手や歌い手と「呼吸を合わせること」——そちらのほうが優先される場面が多い。音符が1個2個違っても、リズムが合っていれば踊り手は踊れます。逆にリズムが乱れると、踊り手は踊れなくなります。
だから、最初のうちは「音を全部正確に弾く」より「リズムの流れを止めない」練習をします。
これがクラシック出身の方には、はじめ「ちょっとモヤモヤする」ことがあります。でも少しずつ慣れていくと、「今日はリズムがぴったり合った!」という快感が生まれてきます。そのときから、フラメンコが一気に楽しくなります。
まとめ:クラシックの経験はフラメンコの武器になる

5つのポイントをまとめます。
- 楽譜がない——耳と目で覚える文化に慣れる時間が必要
- リズムが主役——自分より踊り手・歌い手を支える感覚の転換
- 右手の奏法が違う——ラスゲアードとゴルペに最初は戸惑う
- クラシックの技術は使える——音程感・タッチ・左手の正確さは直結
- 「間違えてはいけない」感覚——リズムを止めない優先順位へのシフト
正直に言うと、「クラシック出身の方がフラメンコを始めたとき」がいちばん最初の数ヶ月が早い、とぼくは思っています。
楽器の扱いがわかっている。耳がある。練習を続ける力がある。あとは「フラメンコの文化」に少しずつなじんでいくだけです。
もし「クラシックギターを弾いてきたけれど、フラメンコを試してみたい」と思っている方がいたら、ぜひ一度体験レッスンに来てみてください。きっと「あ、これなら続けられそう」と感じてもらえると思います。
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