こんにちは!
フラメンコギター池川です。
「なんか最近、ぜんぜん弾けてる気がしない」
「3ヶ月前と変わってない気がする」
こんな言葉をレッスンで聞くと、ぼくは内心「来た!」と思ってしまいます。
やめたくなるほど悩んでいるその状態、実は「上達のサイン」である可能性が高いんです。
スランプは「停滞」じゃない——脳の中では忙しく働いている
ギターを練習していると、必ずこういう時期が来ます。
弾いても弾いても上手くなった気がしない。むしろ前より下手になってる?という感覚。
これ、心理学・運動学習の世界では「プラトー(成長の踊り場)」と呼ばれています。
見かけ上は停滞しているのに、脳の中では何かがまとめ上げられているんです。
例えるなら、パソコンのソフトウェアのアップデート中——外から見ると止まっているように見えるけど、中身では大事な処理が走っている状態。
プラトーが来るタイミングには特徴があります。それは「何かが少し上手くなった直後」です。
Aが弾けるようになった→次はBに挑戦→Bが難しくて「自分は下手だ」と思う。
でもこれは停滞ではなく、課題の難易度が一段上がった証拠。上を目指している証拠なんです。
やめたくなった時に確認してほしい「2つのサイン」
やめたいと感じたとき、まず確認してほしいことがあります。
サイン1: 3ヶ月前と比べているか、1週間前と比べているか
人間の上達は、毎日少しずつ積み上がるのではなく、「踊り場→ジャンプ→踊り場→ジャンプ」を繰り返します。
1週間前と今日を比べると「変わってない」と感じる。でも3ヶ月前と今日を比べると「あれ、こんなに弾けるようになってたの?」と驚くことが多い。
やめたくなったとき、ぼくが必ずお勧めするのが「3ヶ月前に録音した自分の演奏を聴く」こと。
録音を聴いた後、「あの頃の自分、ひどいな(笑)」と思えたら、それが証拠です。
サイン2: 「難しい」と「つまらない」を混同していないか
スランプには2種類あります。
「難しいけど、なんかやめたくない」スランプと、「そもそもこれが好きかどうかわからなくなってきた」スランプ。
前者は踊り場。放っておけばジャンプが来ます。
後者は本当に方向転換のサイン。でもたいていの場合は「難しい→つまらなく感じる」という錯覚で、本当につまらなくなったわけではありません。
踊り場を脱出したVIVAフラ生徒さんの話
先日、60代の女性の生徒さん(Aさん)が「もう無理かもしれません」と言っていました。
セビジャーナスを習い始めて4ヶ月。なかなかリズムに乗れなくて、「同じ年頃の友達はもう通しで弾けるのに」と落ち込んでいたそうです。
ぼくはそのとき、3ヶ月前のレッスン動画を一緒に見ました。
Aさんは絶句していました。「これ、ぼくですか?」(笑)
4ヶ月前の自分と今の自分を比べると、弦を押さえる速さも、右手のリズム感も、コードチェンジの迷いも、全然違う。明らかに上手くなっていた。
「ここが踊り場です。次のジャンプが来ますよ」と伝えたその2週間後、Aさんからメッセージが届きました。「突然、スッと入ってきた感じがします!」と。
踊り場のあとは、こういうことが起きます。
やめないための「5分ルール」と「小さなテーマ」
とはいえ、わかっていてもキツいのがスランプです。そんなときに使える具体的な方法を2つ紹介します。
1. 5分ルール
「今日はとにかく5分だけやる」と決める。
5分経ったら、やめてもいいし、続けてもいい。
ポイントは「5分やることを決めた」のではなく、「5分で終わっていいと決めた」こと。
心の重さが消えると、意外と続いてしまいます。
2. 目標を「今日の最難問」から「今日の一番簡単な問題」に変える
スランプのときは、難しいところを克服しようとしがちです。でもそれだと疲れてやめたくなる一方。
代わりに、「今日は超余裕でできることだけやる」日を作ってみてください。
最初に習ったときの易しい練習曲を弾く。単音で「ラ・ラ・ラ」だけを気持ちよく鳴らす。
ギターを弾く喜びを思い出すことが、踊り場を越えるための燃料になります。
踊り場を越えると、景色が変わる——継続の報酬
最後に、ぼく自身の話をさせてください。
プロになりたての頃、ファルセータ(フラメンコのメロディフレーズ)がぜんぜん弾けない時期がありました。
半年、同じ曲を毎日弾いても、先生に聞いても、何がダメなのかわからない。「ぼくはフラメンコに向いていないんじゃないか」とさえ思いました。
でもある日、突然わかったんです。
右手の親指の重さが足りなかった——たった一つのことに気づいた瞬間、今まで詰まっていたことが全部つながりました。
踊り場を越えた瞬間の感覚は、言葉にするのが難しい。でも一度その感覚を知ると、次のスランプが来ても「またいつかジャンプできる」と信じられるようになります。
やめなくてよかった、と思える日が必ず来ます。
ぼくはそれを何度も経験してきました。
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