速く弾けない人が最初にやめるべき練習——「速く弾く練習」です

こんにちは!

フラメンコギター池川です。

「速く弾けるようになりたくて、毎日速く弾く練習をしているんですが、全然速くならないんです……」

レッスンで、こんな相談をよく受けます。

ぼくはそのたびに、少し間を置いてから、こう答えています。

「じゃあ、まず速く弾く練習をやめましょう」

みんな最初は「え?」という顔をします。でもこれが本当のことなんです。

速く弾けない人が最初にやめるべき練習は、「速く弾く練習」です。今日はその理由と、代わりに何をすればいいかを話します。

「速く弾く練習」が逆効果になる理由

速く弾けない人がやりがちなのが、「速く弾けるようになるために、速く弾く練習をする」という方法です。

一見、理にかなっていますよね。速く走れるようになりたければ全力ダッシュをする。それと同じ理屈で、と。

でも、ギターの場合はこれが大きな落とし穴になります。

速く弾こうとすると、指は「動きを覚える前に先へ進もう」としてしまいます。その結果、手が力んで、音が途切れて、同じミスを何百回と繰り返す練習になってしまうんです。

ぼくはこれを「頑張り逆走現象」と勝手に呼んでいます(笑)

速くなろうと頑張れば頑張るほど、遠ざかっていく。

なぜかというと、ギターの指の動きは「精度」が命で、「勢い」で乗り越えられるものじゃないからです。速い練習でミスを繰り返すのは、ミスを体に覚えさせているのと同じことになります。

脳は「何度も繰り返したこと」を正解として記憶します。ミスを100回繰り返せば、「そのミスが正解」として定着してしまうんです。

速く弾こうとすると指と脳に何が起きているか

ぼくがレッスンで生徒さんを観察していると、速く弾こうとしている人には共通の姿が見えます。

  • 右手の肘に力が入っている
  • 左手の指が弦を押さえる前に次の音を弾こうとしている
  • 途中でつまずいても止まらず、なんとか前へ進もうとしている
  • 弾き終わったあと「なんか弾けた気がしない」という顔をしている

心当たりがありますか?(笑)

特に最後の「なんか弾けた気がしない」というのが大事なサインです。

弾けた気がしないのは、実際に弾けていないからじゃなく、「何をやっているかわからない速さ」で弾いているからです。脳が処理しきれていない。

ギターが上達するのは、一つひとつの動作を意識的に正確にやって、それが無意識に移行するときです。「速く弾く練習」だと、その意識的な段階をすっ飛ばしてしまうんです。

ゆっくり練習で「速さ」が生まれるしくみ

ではゆっくり弾くとき、脳はどんな情報を処理しているか。

  • 次の指はどこに置くか
  • どのくらいの力で弦をはじくか
  • 音が出た後、指をどう離すか
  • 次の音との間をどうとるか

これ、速く弾いていたら一つも意識できません。

ゆっくり弾くと、一つひとつの動作を「正確に」覚えることができます。そしてその正確さが積み重なると、あるとき突然、速く弾けるようになります。

ぼくはよく「ゆっくり練習は、速さのための貯金です」と話しています。ゆっくりやるたびに貯まっていって、ある日「引き出せる」ようになるイメージです。

遠回りに見えて、実はこちらのほうが圧倒的に早い。

具体的なやり方——何BPMで、何回やればいいか

では実際どうすればいいか。具体的に話します。

ステップ1: 「ミスなく弾けるテンポ」を見つける

メトロノームを使って、ミスなく弾けるテンポを探してください。「なんとか弾ける」ではなく、「余裕で弾ける」というテンポです。

ステップ2: そこからさらに20〜30%遅くする

余裕で弾けるテンポから、さらにグッと遅くします。「遅すぎる」と感じるくらいが正解です。

ステップ3: 5回連続ノーミスを目標にする

同じフレーズを5回連続でノーミスに弾く。これだけです。100回ミスしながら弾くより、5回完璧に弾くほうが何倍もの効果があります。

ステップ4: 2〜3日後にテンポを少しだけ上げる

BPMを5〜10上げて、また5回連続ノーミスを達成する。これを繰り返します。

目標のテンポまで、1〜2週間で到達できることが多いです。速く弾く練習を何ヶ月続けてもできなかったフレーズが、この方法で2週間で弾けるようになった方をぼくはたくさん見てきました。

「でも、ゆっくりばかりじゃ速さの感覚がつかめないのでは?」

よくこういう疑問をもらいます。正直な疑問だと思うので、答えます。

速さの感覚を確認したければ、練習の最後に1〜2回だけ、速いテンポで「流す」のはOKです。ただし、ミスしても気にしない。「こんな感じか」と体で確認するだけ。

それ以外の練習時間はぜんぶ「ゆっくり・正確に」に使う。

「速く弾く練習1割、ゆっくり正確に練習9割」くらいのイメージです。

ほとんどの方が逆になっているので、この比率を変えるだけで、驚くくらい変わります。

速く弾けないと悩んでいる方は、ぜひ今日から「速く弾く練習」をやめて、ゆっくり正確な練習に切り替えてみてください。

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