こんにちは!
フラメンコギター池川です。
先日、全国各地でフラメンコを楽しむための取り組みとして、
「街メンコを紹介しました。
すると早速、地方でフラメンコを楽しんでいる愛好家の方から、
「一度、話を聞いてほしいです」
というご連絡をいただきました。
ありがたいですね。
こういう行動力、本当に素晴らしいと思います。
で、お話を伺って、改めて感じました。
全国には、
「踊りたい人はいる」
「フラメンコを楽しみたい人もいる」
「地域で盛り上げたい人もいる」
でも、
伴奏してくれるギタリストがいない。
この悩みを抱えている地域が、本当にたくさんあるのだと思います。
踊りは何十年も踊っている。
仲間もいる。
先生も時々来てくださる。
歌は拙いながらも、自分で歌う。
で、も。
ギタリストがいない。
ここなんです。
これは、なかなか切実です。
ギターがないと、フラメンコの温度が上がりきらない。
口三味線やパルマでも練習はできる。
音源でも踊れる。
でも、やっぱり生のギターが鳴った瞬間に変わる空気ってありますよね。
今日は、そんな
「地元にフラメンコギタリストがいない問題」
について。
そして、ぼくが提案したい
「呼ぶ」より「育てる」
という選択肢について書いてみたいと思います。
この記事の目次
地元にフラメンコギタリストがいない問題
地方でフラメンコを楽しんでいる方から、よく聞く悩みがあります。
それが、
「伴奏してくれるギタリストがいない」
という問題です。
踊りの先生は月に数回来てくれる。
生徒さんもいる。
発表会やイベントにも出てみたい。
歌も、自分たちなりに頑張っている。
でも、地元にギタリストがいない。
結果として、いつも音源で踊るだけになってしまう。
もしくは、先生の口三味線とパルマで練習する。
もちろん、それも大切です。
口三味線もパルマも、フラメンコには欠かせません。
でも、フラメンコの大きな魅力は、やはり
踊り、歌、ギターがその場で合わさること
にあります。
ギターの音が鳴る。
パルマが入る。
歌が入る。
踊りがそれに反応する。
この瞬間に、フラメンコは一気に生き物になります。
ところが、ギタリストがいない地域では、その楽しさを味わう機会がとても少ない。
これが続くと、だんだんモチベーションも下がってきます。
「このまま続けていて意味があるのかな」
「ギターと合わせる機会もないしな」
「もう辞めてしまおうかな」
そんな気持ちになることもあると思います。
でも、ここで終わってしまうのは、もったいない。
ギタリストがいない。
だから、できない。
ではなく、
ギタリストがいないなら、見つけて育てよう。
ぼくは、そこに大きな可能性を感じています。
待っているだけでは、ギタリストは現れない
では、どうすればいいのでしょうか。
プロのフラメンコギタリストを毎回呼ぶ。
もちろん、それができれば素晴らしいです。
でも、距離の問題があります。
交通費の問題があります。
日程の問題があります。
人数の問題もあります。
毎月のようにプロを呼ぶのは、現実的にはなかなか難しい地域も多いと思います。
だからといって、
「いつか誰かフラメンコギタリストが移住してこないかな」
と待っていても、なかなか現れません。
ギターケースを背負った救世主が、ある朝突然、町内会の掲示板の前に立っている。
……という展開は、残念ながらかなりレアです。
映画ならあります。
現実では、なかなかありません。
ではどうするか。
ぼくは、ここで発想を変えたいのです。
フラメンコギタリストを探すのではなく、ギターを弾ける人をフラメンコ伴奏に誘う。
これです。
いきなり完成されたフラメンコギタリストを探すのではなく、地元にいるギター好きの方に、少しずつフラメンコ伴奏の世界を知ってもらう。
これなら、現実的な可能性が出てきます。
狙うべきは“フラメンコ未経験のギター愛好家”
あなたの町に、フラメンコギタリストはいないかもしれません。
でも、ギターを弾ける人はいるかもしれません。
たとえば、
- クラシックギターを弾いている人
- 昔フォークギターを弾いていた人
- 地域の音楽教室のギターの先生
- ソロギターが好きな人
- 生徒さんのご家族
- 友人の旦那さん
- 学生時代にギターをやっていた人
- 町の文化祭でギターを弾いている人
こういう方々が、実は宝の山です。
もちろん、その方々はフラメンコを知らないかもしれません。
ラスゲアードも知らない。
アバニコも知らない。
いや、知ってるかも知れないけど、
「難しくて諦めた」
という方。
さらに。
コンパスと言われても、方位磁石の話かと思うかもしれません。
でも、それでいいのです。
最初からフラメンコ専門でなくてもいい。
まずは、ギターを持っている。
コードが押さえられる。
リズムに合わせて弾ける。
それだけで、最初の一歩としては十分です。
最初から
「踊りを見て、歌を聴いて、場の空気を読みながら即興的に伴奏してください」
なんて言ったら、誰でも逃げます。
そりゃ逃げます。
ぼくだって、フラメンコを始める前にそんなこと言われたら、そっとギターケースを閉じます。
まずは、もっとやさしい入口を作ること。
ここが大事です。
ただし「フラメンコ伴奏やってください」と言ってはいけない
ここで大切なポイントがあります。
ギターを弾ける人に声をかけるとき、いきなり
「フラメンコ伴奏をやってください」
と言わない方がいいです。
なぜか。
かなりの確率で、こう言われます。
「いやいや、フラメンコは難しいでしょう」
「ラスゲアードとか無理です」
「アバニコなんてできません」
「踊りに合わせるなんて無理です」
「あれは特殊能力者の世界ですよね」
分かります。
たしかに、フラメンコギターには独特のテクニックがあります。
本格的な伴奏には、踊りや歌への反応も必要です。
いきなりそこを求められたら、誰でも身構えます。
クラシックギター愛好家の方なら、なおさらです。
「フラメンコ伴奏」と聞いた瞬間に、頭の中で高速ラスゲアードが鳴り響き、心のシャッターがガラガラと閉まる。
これはよくあることです。
なので、誘い方を変えましょう。
大事なのは、
“フラメンコ伴奏”と言わずに、“セビジャーナスという曲を一緒にやってみませんか?”と言うこと。
これだけで、かなり印象が変わります。
こう誘ってください。「人差し指1本で弾けるセビジャーナスがあります」
おすすめの誘い方は、これです。
「人差し指1本で弾けるセビジャーナスがあります」
これなら、少し印象が変わります。
「フラメンコ伴奏をお願いします」
ではなく、
「まずは簡単なセビジャーナスを1曲だけ、一緒にやってみませんか?」
という誘い方です。
こちらの動画で公開しています。
フラメンコギターというと、どうしても
ラスゲアード!
アバニコ!
ゴルペ!
親指ドーン!
みたいなイメージがあるかもしれません。
でも、最初からそれをやる必要はありません。
まずは、シンプルでいい。
簡単でいい。
人差し指1本でもいい。
とにかく、踊り手さんとギターが一緒に音を出す。
そこから始めればいいのです。
最初の目的は、完璧な伴奏ではありません。
「ギターが鳴った!踊りと合った!楽しい!」
この体験を作ることです。
なぜ最初の1曲はセビジャーナスがいいのか?
では、なぜ最初の1曲にセビジャーナスがおすすめなのか。
理由はとてもシンプルです。
ギター伴奏の負担が少ないからです。
セビジャーナスは、踊りや歌で考えると、1番から4番までそれぞれ違います。
踊り手さんにとっては、振付も違う。
歌も違う。
覚えることがたくさんあります。
半年、1年とかけて取り組む方もいると思います。
でも、ギター伴奏だけで見ると、かなり話が変わります。
基本的には、1番から4番まで同じ伴奏を繰り返すことができます。
つまり、
1番だけ覚えればいい。
もっと言えば、実質1分程度の曲を覚えればいい。
さらに言うと、その1分の中でも、パート1とパート2は同じ形です。
違うのは、パート3のサビのような部分ぐらい。
つまり、最初に覚える量は本当に数十秒です。
楽譜にしたら、だいたい1ページぐらいのボリュームです。
どうでしょう。
急に現実的になってきませんか?
「フラメンコ伴奏」と聞くと、巨大な山脈のように感じます。
でも、セビジャーナス1曲からなら、近所の坂道ぐらいから始められます。
もちろん、坂道は坂道です。
少し息は切れます。
でも、いきなりエベレストではありません。
しかも、セビジャーナスは多くの踊り手さんが知っています。
イベントでも使えます。
お祭りでも踊れます。
初心者にも親しみやすい。
だから、最初の1曲として本当におすすめなのです。
踊り手さんは“ギタリストを育てる目線”を持とう
ここが、今回の記事でいちばん大事なところです。
地元のギター好きな方に声をかけて、
「じゃあ、ちょっとやってみようかな」
と思ってもらえたとします。
そのとき、踊り手さん側にお願いがあります。
最初から厳しくしすぎないでください。
「そこはもっとフラメンコらしく」
「本場ではそうじゃない」
「そこはジャマーダを見て」
「そこでスビーダが入るから」
「歌を聴いて合わせて」
これを最初から言われたら、ギタリストはたぶん帰ります。
玄関にギターケースの形の煙だけ残して帰ります。
最初に必要なのは、完成度ではありません。
「弾いてくれてありがとう」
という空気です。
まずは、シンプルな伴奏でいい。
同じことの繰り返しでいい。
踊り手側がギターに合わせる。
止まらずに最後まで通せたら拍手。
それで十分です。
ギタリストに、
「フラメンコ伴奏って怖くないんだ」
「踊り手さんって優しいんだ」
「これならもう少しやってみたいかも」
と思ってもらうこと。
これが最初の目標です。
ギタリストは、最初から完成品として現れるわけではありません。
一緒に育てるものです。
具体的な実践方法
では、実際にどう進めればいいのか。
ここからは、かなり具体的に書いてみます。
1. 地元のギターが弾ける人を1人探す
まずは、地元でギターを弾ける人を探してみてください。
クラシックギター、フォークギター、ソロギター、ポップス、何でも構いません。
大切なのは、ギターが好きで、少しでも興味を持ってくれることです。
2. 「フラメンコ伴奏」ではなく「簡単なセビジャーナス」として誘う
声をかけるときは、
「フラメンコ伴奏をやってください」
ではなく、
「弾いてもらいたい曲があるんですが、1曲だけお願いできませんか?」
と誘ってみてください。
この言い方だけで、心理的なハードルはかなり下がります。
3. 人差し指1本で弾ける動画を送る
次に、こちらの動画を送ってみてください。
動画を見てもらうことで、
「あれ?これなら自分にもできるかも」
と思ってもらいやすくなります。
言葉で説明するより、実際に見てもらう方が早いです。
4. 最初は1番だけでいい
最初から1番から4番まで完璧に通す必要はありません。
まずは1番だけ。
もっと言えば、数十秒だけでもいいです。
その短い部分を、踊り手さんと一緒に合わせてみる。
それだけでも、大きな一歩です。
5. 踊り手さんがギターに合わせる
最初は、ギタリストが踊りに合わせるのではなく、踊り手さんがギターに合わせてあげてください。
これはとても大切です。
いきなりギタリストに、踊りの細かい変化を全部見て反応してもらうのは難しいです。
まずはギターが止まらずに弾けるようにする。
その上で、踊り手さんがそこに乗る。
この順番がいいと思います。
6. 小さな練習会を開く
お互い少し慣れてきたら、身内だけの小さな練習会を開いてみてください。
間違えても否定はしない。
応援する。
大切なのは、ギタリストが
「また弾いてもいいかな」
と思える場にすることです。
7. その様子を見た別のギター好きにも声をかける
1人が始めると、次の1人に声をかけやすくなります。
「この前、こんな感じでセビジャーナスを合わせてみたんです」
「すごく簡単な形から始めました」
「よかったら見学だけでもどうですか?」
こうやって、少しずつ輪を広げていく。
これが、地元に伴奏ギタリストを育てる第一歩です。
楽譜がないと不安な方へ
ぼくが作った教材に、
というものがあります。
これは、フラメンコ伴奏の敷居をとにかく下げるために作った教材です。
その中で、先ほど紹介した
人差し指1本で弾けるセビジャーナス
の構成やリズム譜を入れています。
五線譜やTAB譜ではなく、リズム譜。
なぜかというと、フラメンコ伴奏でまず大切なのは、音数の多さではなく、
リズムに乗って、踊りや歌と一緒に進むこと
だからです。
とはいえ、いると思います。
こういう方。
「わしは楽譜がないと弾けん!!」
「TAB譜がないなんて言語道断!!!!」
「五線譜をください。話はそれからです」
分かります。
長年クラシックギターを弾いている方ほど、楽譜があると安心します。
その場合は、ぼくの別教材
『フラメンコギターの教科書』
に収録されているセビジャーナスもおすすめです。
セビジャーナスとひと口に言っても、いろいろな種類があります。
歌も違います。
メロディも違います。
コード進行も違います。
明るく軽快なものもあれば、少し渋い雰囲気のものもあります。
つまり、セビジャーナスを1曲覚えることは、フラメンコ伴奏の入口に立つことでもあります。
「まずはフラバンでリズムと構成をつかむ」
「楽譜が必要な方は、「フラメンコ・ギターの教科書」も参考にする」
この流れも、とても良いと思います。
セビジャーナスは、人をつなげる曲
セビジャーナスの魅力は、伴奏が始めやすいことだけではありません。
人をつなげる力があります。
初心者でも参加しやすい。
大人数でも踊れる。
イベントでも盛り上がる。
フラメンコを知らない人にも届きやすい。
たとえば、こちらの動画。
80人です。
もう、ちょっとした祭りです。
いや、ちょっとしたどころではないですね。
だいぶ祭りです。
さらに、立川フラメンコでは500人セビジャーナスという、とんでもない規模のセビジャーナスも行われています。
500人です。
もはやセビジャーナスというより、町がそのまま踊り出している感じです。
でも、こういう光景を見ると分かります。
セビジャーナスは、プロだけのものではありません。
初心者も、愛好家も、踊り手も、歌い手も、ギタリストも、地域の人も、みんなで楽しめる曲です。
だからこそ、最初の1曲にぴったりなのです。
ギター1本と歌だけでも楽しめる
セビジャーナスは、踊りだけではありません。
ギターで弾き語りしても楽しい曲です。
こちらの動画も参考にしてみてください。
ギターがあって、歌があって、そこに手拍子が入る。
それだけで、場の空気が変わります。
完璧でなくてもいい。
発音が完璧でなくてもいい。
まずは音を出す。
まずは誰かと合わせてみる。
そこからでいいのです。
歌える人がいるなら、なおさらチャンスです。
踊り手さんが歌ってもいい。
仲間がパルマしてもいい。
ギターは最初はシンプルでもいい。
それだけで、フラメンコの場は少しずつ動き出します。
街メンコで応援したいこと
ぼくが街メンコでやりたいことは、プロのフラメンコ公演を全国に届けることだけではありません。
もちろん、それも大切です。
でも、それ以上に、
その町にフラメンコを楽しむ土壌を作ること
をやりたいと思っています。
地元に踊る人がいる。
地元に歌う人がいる。
そこに、地元のギター好きが1人加わる。
それだけで、その町のフラメンコは大きく変わります。
毎回プロを呼ばなくても、ちょっとした練習会ができる。
地域のお祭りで踊れる。
老人ホームや地域イベントでも演奏できる。
仲間同士で小さな発表の場を作れる。
こういう小さな火種が、全国に広がっていったら面白いなと思っています。
そして、その最初の火種として、セビジャーナスは本当にちょうどいい。
大きな舞台でなくてもいい。
完璧でなくてもいい。
まずは1曲。
まずは数十秒。
まずは、地元のギター好きに声をかけるところから。
それが街メンコの第一歩です。
街メンコについて詳しく知りたい方へ
街でフラメンコを届けるための考え方、演目づくり、フラバンの活用法、MC、音響、会場への声かけまでまとめた無料ガイドをご用意しています。
ギタリストがいない。
歌い手がいない。
発表の場がない。
それでも、最初の一歩は作れます。
まずは小さな音合わせから。
あなたの街に、フラメンコを。
まずは、あの人に声をかけてみよう
もしあなたの町に、伴奏してくれるフラメンコギタリストがいないなら。
そこで諦めるのではなく、ぜひ周りを見渡してみてください。
ギターを弾ける人はいませんか?
昔ギターをやっていた人はいませんか?
クラシックギターが好きな人はいませんか?
音楽教室の先生はいませんか?
ご家族や友人に、ギター好きはいませんか?
その人に、こう声をかけてみてください。
「人差し指1本で弾けるセビジャーナスがあるんです」
「まず1曲だけ、一緒にやってみませんか?」
「難しいことはしなくて大丈夫です」
「私たちが合わせます」
このひと言が、地元のフラメンコを変えるきっかけになるかもしれません。
フラメンコ伴奏は、最初から完璧でなくていい。
まずは1曲。
まずはセビジャーナス。
まずは数十秒。
そこからで大丈夫です。
伴奏してくれるギタリストがいないなら、見つけて育てよう。
その最初の一歩を、ぜひあなたの町でも始めてみてください。
あなたの街に、フラメンコを。
その一歩を、フラバンと街メンコから。























