こんにちは!
フラメンコギター池川です。
みなさん、フラメンコと聞いて何を思い浮かべますか?
情熱的な赤いドレス、かき鳴らされるギター、そして陽気な「オレ!」の掛け声。
スペインの太陽の下、ワイン片手に楽しむ最高にハッピーな音楽……。

そう思っていた時期が、ぼくにもありました。
実は、フラメンコの歌詞(レトラ)を真面目に翻訳していくと、そこには
「昼ドラも真っ青の修羅場」
や
「放送コードギリギリの暴力」
そして
「底なしの闇」
が広がっているのです。
今日は、知れば知るほど「知らなきゃよかった」と震え上がる、
でも知るともっと好きになる(かもしれない)、
フラメンコの怖すぎる歌詞の世界をご案内します。
この記事の目次
1. 料理が下手だと殴られる?(DVが日常茶飯事すぎる件)

フラメンコには「ブレリア」という、とてもテンポが速くてお祭り騒ぎのような曲種があります。
みんなで輪になって踊る、一番盛り上がるやつです。
そんな楽しいリズムに乗せて、おじさんが高らかに歌う歌詞がこちら。
歌詞: “Mi marío me ha pegao / porque quiere que le guise / papitas con bacalao”
日本語訳: 「旦那に殴られたわ / 鱈(タラ)とジャガイモの煮込みを作れって言うから」
……え、理不尽すぎません?
「今日の夕飯、煮込みじゃないの?」バチン!ってことですよね。
これが現代なら即通報案件ですが、昔のアンダルシアではこれが「生活のワンシーン」として、
しかもノリノリのダンスナンバーとして歌われていたのです。
「鱈とジャガイモ」という庶民的なメニューの具体性が、逆にリアルで怖さを倍増させています。
2. 「好きすぎて監禁」は愛の言葉(ヤンデレの極致)

「君を愛してる」なんて甘い言葉、フラメンコの男たちは使いません。彼らの愛の表現はもっと重く、粘着質で、物理的です。
歌詞: “Te voy a meter en un convento / que tenga rejas de bronce…”
日本語訳: 「お前を修道院に入れてやる / 青銅の格子がついたやつにな / お前が苦しむように、そして他の男がお前の体を楽しめないように」
重い。重すぎる。
ただの修道院じゃなくて「青銅の格子(絶対壊れない)」を指定してくるあたりに、
「誰にも渡さない」というガチの狂気を感じます。
「君を守りたい」じゃなくて
「君を世間から隔離して苦しめたい、なぜなら俺のものだから」
という思考回路。
これを満面の笑みで歌われたら、泣いて逃げ出したくなりますね。
3. 「母」は神様、「姑」は悪魔(極端すぎる家族観)

フラメンコの歌詞において、お母さん(Madre)は絶対的な聖女です。
「母さんに会えるなら指を一本切り落としてもいい」なんて歌詞がザラにあります。
一方で、「姑(Suegra)」に対する扱いの酷さといったら、笑うしかありません。
歌詞: “Mi suegra… en vez de encontrar los duros lo que encontró fue una pulmonía”
日本語訳: 「ウチの姑、宝探しに夢中で地面掘り返してたけど… 金貨を見つける代わりに、肺炎にかかりやがった(笑)」
「ざまあみろ」感がすごい。
欲をかいた姑が病気になるのを、小気味よいリズムで「それ見たことか」と歌い飛ばす。
日本でも嫁姑問題は永遠のテーマですが、スペインのヒターノ(ロマ族)たちは、
それをエンタメに昇華してストレス発散していたようです。
4. 笑い飛ばさなきゃやってられない(真面目な話)

ここまで「ドン引き」な歌詞を紹介してきましたが、なぜ彼らはこんな悲惨なことを、あんなに明るく歌うのでしょうか?
歴史を紐解くと、そこには「ガレー船」**の記憶があります。 かつてヒターノたちは、生まれがヒターノであるという理由だけで逮捕され、船のオールを漕ぐ過酷な労働(ガレー船徒刑)につかされました。
歌詞: 「ガレー船へ、ガレー船へ / ヒターノであるという理由だけで有罪にされ / 弁明することさえできずに」
この絶望的な状況下で、彼らは泣く代わりに歌いました。 暴力も、貧困も、理不尽な差別も、
リズムという「盾」を使って笑い飛ばし、体から追い出す(カタルシスを得る)しかなかったのです。
マラガの歌手ラ・レポンパはこう歌いました。
「グラスにお前の顔が映ったせいで、酒が毒になっちまったよ」
失恋の悲しみさえも、こんなシュールなジョークに変えてしまう。これがフラメンコの持つ「生存本能」の強さなんです。
おわりに:フラメンコは「ロック」だ
フラメンコの歌詞を知ると、最初は「怖い」と思うかもしれません。
でも、その怖さの向こう側には、
「どんなに酷い人生でも、生きてやる」
という、とてつもないエネルギーが渦巻いています。
優雅で情熱的?
いえいえ。 フラメンコは、泥臭くて、口が悪くて、
とびきり人間臭い「生きるための叫び」なのです。
次にフラメンコを聴くときは、その激しい足音の中に、
彼らの「毒舌」と「魂」を感じてみてください。
あ、でもパートナーに「鱈とジャガイモの煮込み」をリクエストする時は、
くれぐれも言い方に気をつけてくださいね。。
ではー!
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