こんにちは!
フラメンコギター池川です。
「フォークギターは10年やってたんですけど、フラメンコを始めてみたら全然弾けなくて…」
体験レッスンでよく聞く言葉です。
ぼく自身も「ギター弾けるんだから大丈夫でしょ」と思って来た方を何人も教えてきました。でもほぼ全員、同じ壁にぶつかります。
その壁の正体が、今日お話しする「ストローク癖」です。
フォーク・アコギ出身者がフラメンコを始めると、最初の数ヶ月は「上手いのに弾けない」という不思議な状態になります。技術はあるのに、フラメンコらしさが出ない。
でも、ここを乗り越えると逆に伸びが速い。今日はその「変換方法」を書きます。
フォークギターとフラメンコ、ストロークの「感覚」が全然違う

まずここを正直に言わせてください。
フォークギターとフラメンコのストロークは、見た目は似ています。でも中身は全然違う。
フォークギターのストロークは「コードを均一にかき鳴らす」のが目的です。上から下へ、下から上へ。右手の動きは基本的に「一定の動作を繰り返す」イメージ。
フラメンコのラスゲアード(ストローク)は、「リズムの中で音色を変える」のが目的です。強い音と弱い音、アクセントの位置、タメ——これが命。同じ動作の繰り返しではなく、フラメンコ特有のリズム(コンパス)の中で息をしている感じです。
この違いを理解せずに練習すると、「フォークっぽいフラメンコ」になってしまいます。技術的には弾けているのに、なんかフラメンコじゃない、という状態。
これは失敗でも才能不足でもありません。変換作業が必要なだけです。
アコギ癖①「腕全体で振る」をフラメンコ式に変える

アコギ出身者の多くは、ストロークを「肘から先全体を振り下ろす」動きでやっています。
これはアコギでは正しい動作です。でもフラメンコだと、一つ問題が起きます。
フラメンコのラスゲアードは、指1本1本を順番に弾く技術が多い。腕全体で振っていると、指が独立して動かない。腕の勢いに指が巻き込まれて、流れてしまうんです。
フラメンコ式に変えるには、「手首と指」で弾くイメージに切り替えること。肘より先の大きな動きは最小限にして、手首のスナップと指の独立した動きで音を出す練習をします。
ぼくがよく使う練習法は「エアラスゲアード」。ギターを持たずに膝の上に手を置き、指を1本ずつ順番にはじく練習です。地味ですが、指の独立した動きを感覚で覚えるのに最短ルートです。
アコギ出身のTさん(40代・会社員)は最初この違いに気づかず、3ヶ月悩みました。「腕全体」から「手首と指」に意識を変えた瞬間から、ラスゲアードの音が急に締まってきたと言っていました。
アコギ癖②「チャカチャカ刻む」から「音色とタメで魅せる」へ

アコギのストロークは、基本的に「均等に刻む」のが美しいとされています。
でもフラメンコでは、「均等」が逆に個性のない演奏に聞こえることがあります。
フラメンコの面白さの一つは「タメ」です。あえて少し引っ張って、ギリギリのところで弾く。強くアクセントを入れる場所と、音量を落とす場所を意図的に作る。この「音色の変化」と「タメ」が、フラメンコらしい演奏を作ります。
練習法は簡単。まず自分の演奏を録音して聴いてみてください。「チャカチャカ刻んでいるだけ」に聞こえたら、アコギ癖が残っているサインです。
次に、曲の中で「一番大事なアクセント」を1つだけ決めて、そこだけ強くする練習をします。全部均等に弾こうとするのをやめて、アクセントの山と谷を作ることに集中するだけで、フラメンコらしさが急に出てきます。
アコギ癖③「コードを押さえる」から「コンパス(リズム)が主役」へ
これが一番大事な話かもしれません。
アコギやフォークギターは「コードを弾く楽器」という感覚が強い。「ここはGコード、次はCコード」と、左手の動きを意識します。
フラメンコは、コードよりもコンパス(リズム)が主役です。
フラメンコには12拍のコンパスや10拍のコンパスなど、特有のリズム構造があります。この構造に乗ることが、フラメンコを弾く上で最優先事項です。コードが多少不完全でも、コンパスに乗れていれば踊り手は踊れます。逆にコードが完璧でもコンパスがズレていると、何も成立しません。
アコギ出身者は「コードをきちんと押さえなければ」という意識が強すぎて、コンパスを犠牲にしがちです。
対処法は、パルマ(手拍子)の練習を先にすること。ギターを持たずに、フラメンコのコンパスを手拍子で叩く練習から始めると、体にリズムが入りやすくなります。「コード→リズム」から「リズム→コード」へ。この順番を変えるだけで、フラメンコへの入り方が変わります。
フォーク・アコギ出身者の強みをフラメンコで活かす方法
癖の話ばかりしてきましたが、アコギ・フォーク出身者には明確な強みもあります。
一番の強みは「右手がすでに動く」こと。フラメンコ未経験者が一番苦労するのは右手の運動です。アコギ出身者はその土台がすでにあるので、細かい変換作業をすれば早い段階でフラメンコらしい音が出てきます。
もう一つは「耳が育っている」こと。音楽をある程度聴いてきているので、「あ、今の音が変だった」という気づきが早い。
ぼくの生徒の中でアコギ歴10年の方がいます。フラメンコを始めて3ヶ月で、発表会でセビジャーナスを弾くところまで行きました。「アコギの基礎があったから伸びが早かった」と本人も言っていました。
アコギ経験は邪魔じゃない。変換するだけです。今日の3つの癖を意識しながら練習してみてください。
「フォークギターをやってきた自分が、フラメンコでどこまでいけるか」——それを試してみるのが、ぼくは一番楽しいと思っています。
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